永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

そこからしか見えない景色。

一日中、寝っぱなし。午前中は何とか起きていたものの、午後から夕方18時すぎまで寝ては起きての繰り返し。「よくもまぁ、ここまで寝ることができるな!」と、自分自身をツッコミたくなるほど寝た。そてほど疲れていたのだ。

香川からの運転疲れもあるが、それ以上に疲れたのは『金刀比羅宮』の参拝。いやー、本当にキツかった。

門前町では「杖」を貸し出していた。

「ジジイじゃあるまいし、杖なんか要らない」と思ってスルーしたことを後悔することになる。

昨日のブログにも書いた通り、本宮まで785段もの石段を上って行かねばならないのである。写真からもわかるように、石段に手すりはない。杖があれば多少は楽だったかもしれない。

上りはじめてから、まだ半分もいかないところで完全に足が止まってしまった。一歩踏み出そうと思っても、まったく足が動かないのである。こんなことは生まれてはじめて体験した。

ここへ来たことを後悔し、途中で何度も引き返そうと思った。でも、本宮までの道のりそのものがオノレの人生のように思えてきた。

「ここまで頑張ってきたから」、「もうこれくらいでいいだろう」と、これまで何度自分自身に対して言い訳を繰り返してきたのだろう。ふと、一つの言葉が頭の中に浮かんだ。それは、

「そこからしか見えない景色がある」

オノレの人生を妥協せず、諦めず、生ききったとき、そこから見える景色はどんなものだろう。そう思ったら、止まったままだった足が動きだした。

石段と石段の間にある、踊り場的なスペースで休憩。呼吸が整ってきたところで再び石段を上っていく。

この石段を上ると本宮。この期に及んでも、「もう十分頑張ったから、戻ろう」と悪魔の囁きが聞こえてくる。邪念を振り払って一段ずつ、ゆっくりと上っていく。

本宮に到着!どれだけ時間がかかったのかはわからない。体感的には1時間くらいは経っていたように思う。近くにあったベンチに腰を下ろすと、しばらく立ち上がれないほど疲れた。

時折、吹き抜ける風がとても心地よく、耳をすませば鳥のさえずりも聞こえてくる。身体はヘトヘトだが、心は躍っている。「そこからしか見えない景色」とはこのことだったのか。

びっしょりと汗もかいたし、何よりも棒のようになった脚の疲れを癒やしたい。金刀比羅宮を後にして向かったのは、高松市の仏生山温泉。

ぬるめというか、冷たい源泉と温かいお湯に交互に入ると気分爽快。疲れが癒されていくのを実感した。ここはまた機会があれば来ようと思った。

湯上がりはキリッと冷えたコーヒー牛乳。温泉で火照った身体をクールダウンするとともに、甘ったるい糖分が疲れた身体に染みわたっていくのがわかる。諦めずに金刀比羅宮まで辿り着いた自分自身へのご褒美としては最高の一杯だった。

さて、明日からは〆切を控えた原稿にとりかかる。甘えを捨てて頑張ろう。