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永谷正樹のなごやめし生活

「なごやめし」について書き綴ります。

大手外食産業VS個人経営店の仁義なきモーニング戦争

喫茶文化

昨年3月、大手ファミレスチェーンの『デニーズ』が、朝10時までにコーヒーを注文すると、トーストとゆで卵が無料で付く名古屋風のモーニングサービスをスタートさせた。厳密に言えば、モーニングサービスの発祥の地は愛知県一宮市であるが、とりあえずここでは一宮市も含めた広い意味で“名古屋風”としておく。

かつて東京では'06年5月、UCCコーヒーが手がける喫茶店チェーン『珈琲館』が午前11時までドリンク代のみでクロワッサンなどのパンとゆで卵をワゴン台から好きなだけ取れる「モーニングフリー」を実施した。ところが、こんな太っ腹なサービスにもかかわらず、定着しなかったのである。その理由を東京の友人に聞いてみたところ、「食べ放題とはいえ、わざわざワゴンに取りに行くのが恥ずかしい」という、いかにも東京らしいものだった。名古屋でそんなことをやろうものなら、タッパ持参のおばちゃんが必ずいるというのに(笑)。

2017年1月現在、『デニーズ』のモーニングサービスは今も続いているようだ。私としては名古屋風のモーニングサービスが受け入れられているようで少し嬉しい。東京では『コメダ珈琲店』も進出していることから、「モーニング戦争が勃発!」という報道もあった。それを見た私は思わず苦笑してしまった。なんと、レベルの低いんだろう、と。夜の食事メニューの売り上げ減を朝にシフトすることで取り戻そうとしているだけではないか。これを「戦争」と呼ぶのなら、かつて名古屋で、それも個人経営の店の間で繰り広げられたモーニングのサービス合戦は何だったのか。ええい!生ヌルイわっ!

とはいえ、大手チェーンによるモーニングの参入は、本場の名古屋でも脅威であるのは間違いない。しかも、名古屋ではまったくの異業種であるうどんチェーンの『サガミ』の一部店舗が朝7時~11時までドリンクにトーストとゆで卵、サラダが付くモーニングメニューの提供を始めたのだ。スタッフが仕込みのために朝から店に来ているのなら開けてしまえ!と、始めたのだと思う。『サガミ』は駐車場が広く、うどん店ゆえに席もゆったりとしている。味はともかくとして、友達とダベるのが目的ならば、まったく問題はない。

名古屋市日進市の境、名東区梅森坂界隈は、個人経営の喫茶店やカフェのみならず、『コメダ珈琲』や『サガミ』、『デニーズ』などの大手チェーンも乱立するモーニング激戦区。にもかかわらず、『カフェ・お茶かつ ベニ』は大健闘している。マスターの伊藤孝之さんは言う。

「モーニングは名古屋の喫茶店のプライドにかけて絶対に負たくないと思ったんです。で、毎日来ても飽きないように、数で勝負しようと」

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これが『カフェ・お茶かつ ベニ』のモーニングメニューである。細かい文字でびっしりと書かれている。よく見ると、「追加おかわりコーヒー」や「おにぎり1ヶ追加」、「野菜サラダ」なども用意している。つまり、お腹の空き具合に合わせてカスタマイズできるのだ。驚くのはまだ早い。↓裏面にもモーニングのメニューが載っている。

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「あさがおS」や「あさがおR」、「あさがおDX」など独特すぎるメニュー名がズラリ。1枚目のメニューを合わせると、なんと24種類が揃う。これなら毎日訪れても絶対に飽きることはないだろう。では、『カフェ・お茶かつ ベニ』のモーニングをほんの一部だけ紹介しよう。

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トーストとゆで卵、サラダのベーシックな「元気モーニング」(450円※)。これはまだまだ序の口。※価格はすべて取材時の'16年7月時点のもの。

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こちらはご飯と生卵、味噌汁、小梅がセットになった「さくらモーニング」。「日本人なら朝はご飯に決まっとるがや」という和食党の客にもしっかりと対応している。メニュー名のさくら=和風、という意味である

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「さくらモーニング」にプラス100円でなんと、アジフライとサラダが付く「さくらDX」(510円)に。もはや、これはモーニングではなく、アジフライ定食ではないかっ(笑)。このメニューは、大手ファミレスのモーニングや牛丼店の朝定食に対抗して作ったそうだ。510円と喫茶店のモーニングにしては高い部類に入るが、これを目当てに訪れる客も多いという。

名古屋の喫茶店のモーニングは、とかく品数や豪華さばかりがクローズアップされるが、その奥にあるのは、マスターやママさんの「おもてなしの心」なのである。地元の客はそれに惹かれて喫茶店へ行くのだ。名古屋の喫茶店は今、冬の時代を迎えていて、どの店も経営は思わしくないと聞く。どうか一人でも多くの人、とりわけ若い世代の人が喫茶店に足を運んでほしい。そして、厳密にコスト計算された大手外食産業のモーニングメニューからは感じることのできない魅力を後世に伝えてもらいたい。