永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

顔はその人の人生そのもの。

普段は料理ばかり撮っている私だが、年に数回、仕事で地元のアイドルを撮影することがある。カメラを構えて、ファインダーを覗くと、彼女たちは瞬時に「いちばんカワイイ顔」を見せる。いや、顔だけではない。指先から足の爪先までかわいらしさを全身で表現する。

実際、彼女たちは目鼻立ちが整っているし、スタイルも良い。何しろ、自分自身が商品なんだから、ストイックに自己管理をして、いちばんカワイイ顔を見せる訓練をしているのだろう。

彼女たちの魅力を突き詰めると、「若さ」に辿り着く。若さゆえの弾けるような生命力やエネルギー。それがファンを虜にするのだ。私は今も昔もアイドルに夢中になったことはないが、その気持ちは理解できる。ただ、写真が撮りたいと思うかどうかは別だ。あ、もちろん、仕事であれば気持ちに関係なくシャッターを切るが。

先日、Facebookの友達の写真を撮る機会があった。何でも、同僚の女の子から「写真を撮らせてください」といわれたそうで、私が同行して撮り方のアドバイスをすることになったのだ。で、私も撮らせていただいた。

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失礼を承知の上で書くが、40代の彼女にはアイドルのような生命力やエネルギーはない。素人なので、「いちばんカワイイ顔」を見せる術もない。が、写し出されたその顔や出で立ちに、写真家としてとても魅力を感じるのだ。それは彼女の「憂い」にあるのだと思う。それはアイドルがどれだけ逆立ちしても敵わない。

彼女がこれまでどのような人生を歩んできたのかはそんなには知らない。きっと楽しいことばかりではなかったのだろうとファインダーを覗いたときに直感した。でも、決してくたびれてはいない。

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想像するに、惰性でその日を暮らしているのではなく、不器用ながらも、もがき苦しみながらも懸命に生きているのだ。だから、私は無加工で、しかもモノクロでありのままを撮った。彼女からすれば、もっとキレイに、若く見えるように撮ってほしかったと思うが。

楽しいばかりの人生であればそれに越したことはない。が、人生でただの一度も失敗や挫折を経験したことのない人を私は信用できない。人は悲しみを背負った分だけやさしくなれる。昨日のブログで触れた声優志望の女の子も過去に友達を傷つけてしまい、

「これからもずっと懺悔しながら生きていきます」と、友達との関係を修復できなかったことをずっと後悔していた。

「たしかに懺悔するのも大切だけど、もしも、貴女が誰かに傷つけられたら、その人を赦してあげればいいんだよ」とアドバイスをした。

人は年をとるにつれて、生きざまや生き方、考え方が顔に出る。私がグルメ取材へ行った際に、料理だけではなく、それを作った料理人にもレンズを向ける理由もそこにある。