永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

チャーラーの旅。26

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接客はその料理の味をも左右する。

これは長いことグルメ取材をしてきた私の格言である。

グルメ取材をはじめてまだ間もない頃、名古屋で誰もが知っている老舗店へ先輩カメラマンと覆面取材へ行ったことがあった。要するに、客に扮して料理を注文して、味はもちろんのこと、接客や店の雰囲気を細かくチェックするのである。

その日は猛暑日で一秒でも早くビールが飲みたかったので、席へ着くなりビールを注文した。ところが、待てど暮らせどビールは出てこない。再び店員さんを呼んで催促するも出てこない。

先輩が痺れを切らして、ボーッとつっ立っている店員さんに直接「ビール注文したんだけど、まだ?」と訴えて、ようやく出てきた。やっと喉を潤うことができたが、その後に出てきた料理は美味しいと思えなかった。

この一部始終を記事にしたら、店から編集部に抗議があった。

「料理の味とは関係ない部分で評価するのはいかがなものか」と。その気持ちを理解できないことはない。味を追求しているからこそ、悔しい思いをしたのだろう。

しかし、客として店へ行き、不快な思いをしたのは紛れもない事実であるし、そのおかげで美味しいはずの料理も不味く感じたのもまた事実なのだ。

何度でも言うが、接客はその料理の味をも左右する。

前置きがかなり長くなった。その格言を「チャーラーの旅。」で実感したのだ。

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店は春日井市鳥居松町にある『謝々』。『食べログ』で見つけて何となく行こうと思ったのだ。正直、あまり期待していなかった。

tabelog.com

ランチタイムのピークが過ぎていたので、店へ入ると客は私一人だけだった。店を切り盛りするのは年輩のご夫婦。作った料理をわざわざ運んでもらうのも申し訳ないと思い、私は厨房の目の前にあるカウンター席に座ろうとした。すると、

「テーブル席で構いませんよ」とご主人がやさしく声をかけてくださったのだ。人は単純な生き物である。たったそれだけで私の中で店の好感度は上がった。注文したのは、もちろん「炒飯ラーメン」(750円※2019年9月現在)。で、炒飯とラーメンが同時に運ばれた。

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これがラーメン。具材はチャーシューと半熟ゆで卵半分、メンマ、モヤシ、海苔、ネギ、とセットメニューのラーメンとは思えないほど豪華。

味は昔ながらの町中華ど真ん中のあっさり系醤油ラーメン。身体にじんわりと染み込むような、やさしい味わい。縮れのある麺も旨い。

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一方、こちらが炒飯。これもまたいかにも町中華ど真ん中の炒飯。チャーラーの炒飯はハムを使う店も多いが、ここのはチャーシューもゴロゴロ。

味付けもラーメンと同様にやさしい味。だからといって、決して薄味ではなく、奥行きのある味わい。これがラーメンと本当によく合うのである。炒飯とラーメンを交互に貪るようにしてあっという間に完食してしまった。

まったくの無名店(地元では有名かもしれないが)がこれほどのチャーラーを出すことに感動すら覚えた。店の造りを見てもかなり長いことお店をやられていることがわかる。地元の常連客に愛されているのだろう。

食後に豊かな気持ちになったのは、「テーブル席で構いませんよ」とやさしく声をかけてくださったからだと思う。やはり、接客は味をも左右するのだ。

50歳と6ヶ月。

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50歳になってもうすぐ半年が過ぎようとしている。

今年、50歳の誕生日を迎えたとき、生きていることを実感しながら残りの人生を本気で生きようと決めた。

生きていることを実感するとは、このブログで何度も書いているとおり、「内なる自分」が自分自身のことを「よくやった」と褒めてくれることだ。

内なる自分、つまり、自分が理想とする姿と今の自分がかけ離れているから、人は悩み、落ち込む。マジメな人ほどその傾向は強い。

ちゃらんぽらんの私は、「うるせぇ!できねぇもんは仕方ねぇだろっ!」って開き直ってた。それがカッコイイとさえ思ってた。

では、私が生業としている写真と文章に対しても「できねぇもんは仕方ねぇだろっ!」って言えるのか。絶対に言えないし、言いたくもない。このまま、なんちゃってカメラマン・なんちゃってライターのままで終わってもよいはずがない。

そう思ったとき、生き方を変えようと思った。内なる自分の声を聞き、それに従う。そして、内なる自分に近づく。

サボろうとする心や怠けようとする心、ラクな方を選ぶ心、不平不満の心などなど、マイナスな感情は内なる自分の声ではないと断定して、耳を貸さないと決めた。それでもときどき負けてしまうんだけどね。そんなときは、自己嫌悪に陥らないように、自分を赦してやるのも重要だ。

自分の気持ちが、というか心が変われば、環境も変わる。とはいえ、私の心は大きく変わったわけではない。このままではダメだと気付いただけかもしれない。それでも環境は変わった。私でなければならないような仕事が増えたのだ。

仕事に対する気持ちが真剣になったから、とてもやり甲斐を感じるようになった。オファーをくださるクライアントにも感謝の気持ちが湧き起こってきた。あ、以前は不真面目で感謝もしていなかったわけではないですよ。もっと、何か、こう、明らかに今までとは違う感情が芽生えたというのかな。

内なる自分にもっと、もっと近づくことができたら、もっと環境が変わるかもしれない。ひいては人生も変わるかもしれない。50歳と6ヶ月を迎えるにあたってそんなことを考えている。

ネット配信動画に出演しました。

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昨日は、ネット配信動画の仕事。あ、これは、テレビと同様に名古屋めしの専門家として名古屋めしのルーツやエピソードなどを紹介するというもの。

今回出演させていただいたのは、JAグループ北海道が今年6月に発足させた「天下糖一プロジェクト」なる砂糖のPR企画の中の動画。

tenkatoitu-project.jp

その内容は、大食い女王のアンジェラ佐藤さんがアンジェラ“砂糖”に改名して、全国の砂糖にまつわるご当地グルメをレポート&大食いをするというもの。SNSやYouTubeで配信される。

名古屋は知る人ぞ知るデカ盛りグルメの聖地ゆえにアンジェラ佐藤さんは、これまで何度か名古屋へ来たことがあるそうだ。しかし、食べたことがあるのはデカ盛りグルメばかりとか……(笑)。

今回、出演のオファーを受けて、動画制作のスタッフさんに紹介したのは、錦3丁目にある『名古屋大酒場 だるま』

ここを取材したとき、私は“名古屋めしのデパート”と記事に書いた。つまり、ほとんどの名古屋めしがここ一軒で食べられるのである。しかも、クオリティも高い。今回の企画にぴったりだと思ったのだ。

しかし、ここでアンジェラ佐藤さんが大食いするのをすっかり忘れていた(笑)。いったい、彼女は何を食べまくるのか???と思ったら……。

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味噌おでん!あ、念のために言っておくが、ダチョウ倶楽部的なリアクション芸ではない(笑)。大根や玉子、こんにゃくなど全10種類の具材がなんと5つずつ、計50個!

ビッグダディのような大家族ならともかく、一般家庭でもこんなには食べないだろう。ところが、アンジェラ佐藤さんは……。おっと、詳しくは動画をご覧いただきたい。配信は11月の予定。お楽しみに!

それにしても、アンジェラ佐藤さんはとてもイイ人だった。やはり、食べることが大好きでカメラが回っていない間も名古屋めしや地元食材について興味津々でいろいろ訊ねてきた。それ!それなんだよなぁ。にわか仕込みや、やっつけで仕事をしていると、必ずそれは視聴者にも伝わるし、何よりも現場の空気も悪くなる。やはり、自らも楽しむというのが仕事の基本なのだ。

アンジェラ佐藤さん、お疲れ様でした。的確な指示を出しながらカメラを回してくださった中川さん、このたびはお声をかけていただき、ありがとうございました。そして、取材を快諾してくださり、美味しい料理を提供してくださった『名古屋大酒場 だるま』の皆様、ありがとうございました!

チャーラーの旅。25

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チャーラーの旅。ラーメンのチェーン店におけるチャーハンのポジションは、ラーメンだけではもの足りない場合に注文する、いわばサブメニューである。だから、ラーメンほどこだわって作っていない。

しかし、愛知県春日井市に本店があるラーメンチェーン『豚旨 うま屋』の「名物チャーハン」は別格。メニュー名に“名物”とあるだけに、ラーメンを注文せず、チャーハンだけを食べに来る客もいると聞く。

『豚旨 うま屋』の「名物チャーハン」については、以前にブログでも紹介した。

nagoya-meshi.hateblo.jp

『豚旨 うま屋』は、ラーメンチェーンでありながら、チャーハンもまたメインなのである。チャーラーは1つの料理であり、チャーハンとラーメンそれぞれがメインであるという私の考えに近いものがある。

しかも、ランチタイムには、「特製ラーメン」と「名物チャーハン」のセット、「チャーハンセット」がある。

『豚旨 うま屋』の「特製ラーメン」は、とんこつしょうゆである。私が疑問に思ったのは、とんこつしょうゆのラーメンとチャーハンとの相性。これまでしょうゆラーメン(中華そば)とチャーハンの組み合わせばかりを紹介してきたが、しょうゆ以外のラーメンとの組み合わせは想像もつかない。ってことで、検証するために店へ向かった。

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これが「チャーハンセット」。チャーハンとラーメンが同時に出てきた。うん、オペレーションは完璧だな。そこはやはりチェーン店の強みかもしれない。いや、チェーン店でもダメダメな店はいっぱいあるな。ココのスタッフが優秀ということだな。

単品の「名物チャーハン」と「特製ラーメン」よりもややボリュームが少ないように見える。さすがにそれぞれ1人前だと多いのだろう。私は完食する自信があるが(笑)。

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まずはラーメンから。食べるたびに思うのが、『横綱ラーメン』をブラッシュアップさせたような味。『横綱ラーメン』は、アンモニア臭のようなとんこつ特有の臭みを感じることがあるが、ここは皆無。しっかりとした豚の旨みを感じる。

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次はチャーハン。うん、やっぱり旨いなぁ。口に入れたときに醤油の香ばしさがふわっと広がる。しっとりとした食感に仕上げられたご飯の一粒一粒にチャーシューとネギの旨みがコーティングされている。

肝心なのは、交互に食べたときのバランスなのだが……。これが実にマッチしているのだ。これまでチャーラーのラーメンは、シンプルな中華そばがいちばんだと思っていた。しかし、ここ『うま屋』のように、ラーメンの味ありきでそれに合うチャーハンを作ることだってできるのだ。

『うま屋』を訪れたのは、ランチタイムのピークが過ぎた13時半頃だった。それでも店内はほぼ満員。人気の秘密は、チェーン店でありながら、一つ一つのメニューがきちんと考えられていることにあるのだと思った。 

 

変態ホイホイ。サードシーズン(笑)。

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忘れた頃にやってくる超不定期連載「変態ホイホイ。」(笑)。

あまりにも久しぶりすぎるので、ご存じない方もいるかもしれない。これは、言い寄ってくる相手がすべて変態という私の友人(女性)の変態エピソードをまとめたものである。

先日、電話で話していたときのこと。唐突に「今日、変態がいたんですよぉ」と彼女。

これまで紹介したエピソードは、つき合っていた彼氏または好意を寄せていた相手が変態だったというパターンだった。しかし、まったく見ず知らずの変態と遭遇することも多々あるという。さすがは変態ホイホイである。

「ショッピングモールのフードコートでお昼ご飯を食べていたんですよ」と彼女。

彼女は女子らしくないとことがあり、グループで行動するよりもお一人様を好む。で、ランチもパンケーキやパスタのようなオシャレカワイものではなく、こってり系のラーメンや牛丼も一人で食べに行く。

って、まぁ、それはどうでもよい。変態と遭遇したのは、そんな一人メシをしている最中のことだった。

「お昼のピークの時間が過ぎていたこともあって、席はガラガラだったんです。にもかかわらず、60歳くらいのおじさんが食べている私のすぐ目の前に座ったんですよぉ」

偶然ということもあるし、彼女の勘違いということもある。そのフードコートに通い詰めていて、座った場所がたまたまおじさんの定位置だったことも考えられるが、このとき彼女の変態センサーが反応したのだ。

「で、私の顔をニヤニヤ笑いながらじーっと見てくるんですよ。すごくキモチ悪かったんだけど、目を逸らしたら負けだと思って、私もおじさんをじーっと見てやった」

彼女のこの対応が人とズレていると思うのだが、変態には効果があるだろう。私なら慌てて退散すると思う。しかし、おじさんは筋金入りの変態だった。まったく意に介することなく、自分を見つめ続けるのだった。どちらかが目を逸らしたら負けというチキンレース状態が続いた後…。

「もう、これ以上はヤバイと思って、食べてる途中だったけど、おじさんの視界に入らない場所に移動しました」

うん、それは正しい選択だ。むしろ、なぜもっとはやくそうしなかったのか。それにしても、おじさんが我を忘れて凝視してしまうほど、彼女はエロティックな格好をしていたのだろうか。聞いてみたところ、

「ううん、Tシャツと短パン」とのこと。

短パン……。おじさんは脚フェチだったのか。いや、それなら顔ではなく脚を見ているはずだ。彼女の顔が変態を引き寄せているのである。

席を移動して難を逃れた彼女だったが、この話にはオチがある。

「移動した席でまたご飯を食べていると、また別のおじさんが近くに座って私の顔をじーっと見てきたんですよぉ」

やっぱり、彼女は変態ホイホイだわ。

独立記念日。

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昨日、9月25日は、24年前に編集プロダクションを辞めてフリーとなった私の「独立記念日」。

当時は30歳までにフリーになろうと考えていた。が、編集プロでの仕事は激務で、その日に帰ることができなかった。

すでに結婚していたものの、女房とまともに話ができたのは、週に1回。会社が休みの日曜日だけだった。お金よりも時間がほしかった。

もっと時間があれば、女房とゆっくり過ごすことができる。

もっと時間があれば、仕事のクオリティを上げることができる。

もっと時間があれば、面白い企画を考えることができる。

もっと時間があれば、楽しく仕事に取り組むことができる。

そんなことばかり考えていた。

「この仕事は、フリーになってナンボのもんでしょう」と、社長に告げて編集プロダクションを辞めた。

その翌日、つまり、フリーとなった初日に感じた何とも言えない解放感は、今でも忘れられない。きっと、私はフリーでなければ生きられなかったのだ。

編プロ時代にお世話になった編集部の皆様にはDMを送った。

そこには大きな文字で「フリー宣言。」とタイトルを入れた。そして以下のような文章を載せたと思う。

1995年9月25日をもちまして、私、永谷正樹は有限会社○○○(編プロ)を退職し、フリーカメラマン兼ライターとして第一歩を踏み出しました。

今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

もちろん、そのDMには連絡先をのせた。連絡先には□で囲んであり、その部分を切り取ると名刺になるようにした。私は昔からこんなことが好きだったのだ。

あ、思い出した!そういえば、フリーになったとき、当時仲良しだったSMの女王様にお祝いのお花をいただいたっけ(笑)。

さて、お金よりも時間がほしいというのは、今も変わらない。ガンガンに稼ぎまくることに今ひとつ価値を見出せないから、いつまで経っても貧乏なのだ。っていうか、稼ぐことが目的ならば、こんな仕事を選んでいない(笑)。

では、時間を手に入れることができたのかといえば、実はそうでもない。どういうワケか、やたらと忙しい。〆切に追い立てられて、ヒィヒィ言いながら仕事をしている。これはいったい、どういうことなのかと逆にこちらが聞きたいくらいである。

でも、心の中はフリーになってからずっと自由。編集プロダクションを辞めてフリーになった本当の意味は、そこにあったのかもしれない。

何はともあれ、フリー生活も25年目に突入。いつもお世話になっている皆様、今後ともよろしくお願いいたします。

 

※写真は先日仕事で訪れた広島で撮影。取材後にのんびりと撮影を楽しむことができるのもフリーになったおかげである。

ルーティーンの断捨離。

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人生を変えようと思ったら、

生き方を変えねばならない。

 

いくら変えようと思っていても、

以前と何ら変わらない日々を過ごしていたら

変わるわけがない。

 

当たり前の話だ。

 

まずは、

50年間も心に、身体に染みついた

ルーティーンを見直そう。

 

人生を変えるという目標の

妨げとなるルーティーンは捨てる。

 

ルーティーンの断捨離だ。

 

そこまでやらねばならないのかという

気持ちも頭の片隅にある。

 

おっさんの悪あがき。

そう思われても仕方がない。

 

でも、どうしても、

このまま終わりたくないというのが

正直な気持ちだ。

 

写真と文章で

表現すること、伝えることを

生業としている以上、

一人でも多くの人に

影響を与える人になりたい。

 

だからこそ、

ルーティーンを見直そう。

 

そして、

捨てられるものは、

すべて捨てよう。