永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

義兄のこと。父母のこと。

私の父母は再婚同士。それぞれに子ども、私にとっては2人の義兄がいる。義兄たちは年が離れていることもあって、いや、それ以外にも事情があったかもしれないが、一緒には暮らしていなかった。

そんな家庭の事情について幼い頃はよくわからなかったし、父母も語ろうとしなかったが、思春期になるとわが家は普通の?家庭ではないことを理解していた。

平成24年に父と母が亡くなり、私が喪主を務めた。葬式だったのか四十九日の法要だったのかよく覚えていないが、一段落がついたとき、義兄たちと飲みに行った。

酒の勢いも手伝って、義兄たちは父と母が離婚したとき、どれほどショックを受けたのか、そして、離婚してからどれだけ寂しい思いをしてきたのかを話しだした。

「マサキにとっては良き親だったのかもしれない。でも、オレにとっては必ずしもそうではない」と。

おそらく、父と母に言いたかったのだろう。しかし、言えないまま亡くなってしまったので、やり場のない気持ちを私にぶつけるしかなかったのだ。

長い間、ずっと心の奥底に抱えていたものを吐き出すことで少しでも楽になるのならと思い、私は黙って話を聞いた。

生きていて何がいちばん辛いか。それは親に捨てられることだろう。父母は捨てたという意識はなかったかもしれない。いや、なかったと思う。しょっちゅうお互いに行き来もしていたし。

しかし、義兄たちは違う。自分は捨てられたという気持ちがある。にもかかわらず、横道に逸れることなくオノレの人生を切り拓いてきた義兄たちを私は尊敬している。

ただ一つ、父母を弁護するとしたら、父母は姉と私が生まれてから普通の家庭を作ろうとしたのだ。つまり、生き直そうとしたのだ。

プラスマイナスゼロからプラスにするよりも、マイナスからプラスにする方がはるかに難しい。油断をすると坂道を転げ落ちるようにすぐにマイナスになってしまうから、相当なエネルギーが必要だったに違いない。

愛情を持って姉と私を育ててくれた父母のことも私は尊敬している。