永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ヤゴ救出作戦。

「ヤゴ救出作戦」というのをご存知だろうか?

小学校でプールの授業が終わる秋、トンボがプールに卵を産む。そして、幼虫のヤゴになって翌年の夏にヤゴからトンボになるのである。

ところが、プールの水を抜いてしまうとヤゴたちは死んでしまうため、プール開きの前にできるだけ多くのヤゴを捕まえて救出するというのが「ヤゴ救出作戦」である。

身近な生き物に興味を持ち、生き物の命の尊さを学ぶことを目的に私の暮らす地域でも小学校2年生が学校行事として行っている。

3年生〜6年生も希望者は参加することができるそうで、昆虫好きの長男は3年生から毎年参加していた。そして、最後の最後まで夢中でヤゴを捕まえていた。

捕まえたヤゴは自宅に持ち帰って、それぞれの家庭で飼育することになっていた。中には虫が苦手な親もいて、長男はそのヤゴをすべて引き取った。数にして20匹くらいはいたと思う。

ヤゴは同じ水槽に入れると共食いするため、半分にカットしたペットボトルに水を張って、1匹ずつそこに入れる。また、羽化するときに上ってこられるように、割り箸も立てておく。ちょうどプランターのようにして育てるのである。

狭いわが家にはそれを置く場所がなく、仕方がないので洗面所にスチールの棚を置いて、そこにペットボトルを並べることにした。

エサは釣具屋で冷凍の赤虫を購入し、水で解凍したものを1匹ずつピンセットで摘んで、ヤゴの前でユラユラさせると生き餌と勘違いしてパクッと食べる。私なら面倒くさくて途中で嫌になってやめてしまう。が、長男はそれをまったく苦に思わず、2時間以上もかけてコツコツとエサを与え続けていた。

朝、顔を洗おうと思って洗面所のドアを開けると、トンボが元気よく洗面所の中を飛び回っていることがあった。長男が甲斐甲斐しく世話をしたおかげでヤゴからトンボに羽化することができたのだ。

長男は羽化したトンボを外へ放して、次の命へと繋げた。ところが、羽化に失敗して羽がグニャグニャに曲がってしまったトンボがいた。自然界では鳥などに食べられてしまうが、長男はそのトンボがギンヤンマだったこともあり、「ギンゾー」という名前を付けて世話をした。

ヤゴのときのように赤虫を与えたり、虫かごから出してあげたり、それはもう愛情をいっぱい注いでいた。1週間が経ち、10日が経ち、2週間が過ぎた頃、ギンゾーは死んだ。長男はとても悲しんだが、親としてはよい経験をしたと思っている。

「ヤゴ救出作戦」の目的である、「身近な生き物に興味を持ち、生き物の命の尊さを学ぶ」ことができたからである。「ヤゴ救出作戦」も「ギンゾー」との出会いと別れも長男にとってはかけがえのない思い出になっていると思う。

 

※トップの画像は、長男が高校生の時にマークシートの解答用紙に書いた虫の絵。あまりにもよく書けていたので写真を撮った