永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

そばにいるよ。

f:id:nagoya-meshi:20210608234630j:plain

2018年に亡くなった俳優の大杉漣さんが最後に主演を務めた映画『教誨師』をAmazonプライムで見た。

kyoukaishi-movie.com

拘置所に収監されている6人の死刑囚と教誨師である大杉漣さんとの会話が淡々と繰り返され、正直、退屈な作品だと思った。

しかし、物語がすすむにつれてどんどん引き込まれていった。

死刑の宣告を受けて、それを受け容れている者。いない者。足掻く者。実力派のキャストばかりだったからなのか、その描写が秀逸だった。

死刑囚たちは、キリストの教えを説く教誨師の話なんて誰も聞いてはいないし、神を語ったところで彼らの心にはまったく響かない。

でも、教誨師は諦めず、ひたすら彼らと向き合う。

そして、教誨師が放ったひと言で大量殺人を犯した凶悪犯の心が少し動く。

それは、

「もう、悔い改めよとか、神様がどうのこうとか、どうでもいいじゃないですか。私、あなたのそばにいますよ。あなたもどうか、私や彼らとあなたが殺めてしまった人々、一人一人と寄り添ってもらえませんか」

だった。

映画とはまったく状況が異なるが、私が精神的に落ちていたとき、

「私は何もできないけど、ずっとそばにいるよ」

と言ってくれた親友のことを思い出した。

そばにいるだけでは悩みや問題は解決しないかもしれない。でも、誰かがそばにいてくれたら救われることだってある。実際、私はそれで救われた。

世界ヲ明ルク。これが私の究極的な目標ではあるが、それ以前に

「そばにいるよ」

と、目の前の人に寄り添うことができる人でありたい。

そう思った。