永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

「三英傑」二物申ス。

愛知県民であれば、10人が10人知っているコトバがある。

それは、「三英傑」。

県外の方は頭の中が?マークだらけだと思う。

「三英傑」とは、三人の、非常に優れている大人物という意味であるが、愛知県出身でそんな人たち、いたっけ?

財界でいえば、トヨタグループ創業者の豊田佐吉とソニー創業者の盛田昭夫ともう一人は……。えーっと……。

球界でいえば、イチローと稲葉篤紀ともう一人は……。えーっと……。

芸人でいえば、オアシズの光浦靖子と大久保佳代子ともう一人は……。じゃなくて、レツゴー三匹の正児、じゅん、長作だな(笑)。でも愛知県出身じゃないし。

俳優ならばどうだ!松平健と森本レオ、平田満、平泉成、佐藤二朗、玉木宏……。三人どころではない。

答えを教えよう。

愛知県で「三英傑」といえば、戦国時代において天下統一へと導いた織田信長と豊臣秀吉、徳川家康である。

岐阜の人は「信長は岐阜やろ!」と言うだろうし、

大阪の人は「秀吉は大阪やがな!」と言うだろうし、

静岡の人は「家康は静岡ずら!」と言うだろう。

すまん。それぞれの方言はよくわからない。フンイキね、フンイキ。

では、信長と秀吉、家康は愛知県とどんな関わりがあるのか。

信長と秀吉は尾張国、家康は三河国、つまり、愛知県出身なのである!どうだ!スゴイだろ!それだけで驚くなよ!実は「三英傑」のみならず、戦国武将の7割が愛知県出身なのである!どうだ!スゴイだろ!

…………と、いうのが愛知県のスタンスである。バカバカしいったらありゃしない。

出身が愛知県と聞かされた人のリアクションを想像できなかったのだろうか。

「ふーん」で終いだ。出身地なんてものは。

今も生まれ育った故郷で暮らしている人が地元を愛するのは理解できる。では、地元を離れた人は?

そりゃ望郷みたいな思いはあるだろう。でも、アイデンティティの中に占める割合としてはどうか。ほんの一部にすぎないと思う。

その人が何をしたのかが重要なのだ。

「三英傑」にまつわる史跡は沢山あるにはあるものの、岐阜や大阪、静岡に比べたら、その歴史的価値みたいなものは低いだろう。専門家ではないのでよくわからないけど。

戦国時代の桶狭間の戦いや小牧・長久手の戦いなどを除いて、愛知県は歴史の表舞台に立ったことは少ない。

そこで出身地にスポットを当てた。どうしても私はそこに姑息さを感じてしまう。思いっきり「東京の人」になりきっていたのに、人気が落ち目になった途端に地元出身という理由だけでちゃっかりと地元ローカルのテレビ番組に出ている芸能人かっつーの。

歴史の表舞台に立ったことがないのは、もともと豊かだったからという見方もできる。愛知県は山も川も海もある。米も野菜も魚も豊富に採れたのだ。

終戦直後に「ういろう」が生まれたのも、なぜか名古屋に砂糖や米粉があったからだ。私ならそこにスポットを当てる。

ないものねだりをするのではなく、すでにあるものに着目する。それが町おこしの基本中の基本ではないか。