永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

井の中の名古屋めし。

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先月、宮崎へ行ったとき、「吉瀬美智子似の店員がいる」と友人に連れて行ってもらった居酒屋での話。吉瀬美智子似の店員さんは、大将の妹さんだった。以下、美智子さん(仮名)とする。

「この人、ナガヤさんといって、名古屋めしを世の中に広めた人なんだよ!」と、友人は私を美智子さん(仮名)に紹介してくれた。いやいや、そんな大したものではないが、それはどうでもよい。

美智子さん(仮名)は、友人が言う名古屋めしがイマイチわかっていないようだった。それどころか、そのコトバを初めて聞いたような顔をしている。辛うじて味噌かつやひつまぶしは知っていたが、名古屋めしというコトバは知らない様子だった。

彼女の場合は特殊かもしれないが、名古屋めしの知名度はこの程度だとも思った。名古屋めしだ何だと盛り上がっているのは地元だけなのだ。

愛知万博のときもそうだった。名古屋の街のいたるところに万博のポスターが貼られていたのに、東京ではまったく見なかった。当時はこの温度差に驚いた。実際、万博に足を運んだのは圧倒的に地元。東京に住む私の知り合いはほとんど来なかった。

そもそも、だよ。東京や大阪で暮らしている人が名古屋になんて興味があるか!?あるわけがないぢゃないか!そんなこと、冷静に考えればわかるだろう。

ついでに言うと、名古屋人は日本で東京、大阪に次ぐ都市が名古屋だと思っているフシがある。でも、2位の大阪とはダブルスコアくらいの差があるし、博多や札幌で暮らす人たちもわが街こそが第三の都市と思っている。

街の規模としては名古屋の方が大きいかもしれない。でも、博多や札幌には食べ物以外にも魅力が沢山ある。名古屋はどうか?20年間も名古屋めし、名古屋めし、名古屋めし……。しかも、発信は外ではなく内へ向けて。それって、どうなのよ?

味噌かつや手羽先、ひつまぶしなどの名古屋の食べ物の総称を「名古屋めし」としたのはすばらしいアイデアだと思う。でも、もうそろそろ地元でそのコトバを使うのをやめませんか?

 

※写真は昨日のお昼に食べた名古屋・新栄町『大須たんたんめん』の「汁無担々麺」。平打ち麺だからといって名古屋めしではない。その短絡的な発想こそ、名古屋めしが記号化された証拠である。