永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

父の呟き。

ふと、思い出した。私が幼かった頃、アフリカだったかカンボジアだったかよく覚えていないが、難民キャンプの子供たちのことをテレビでとり上げていたことを。

どの子供もやせ細っていて骨と皮だけ。顔にハエがたかっていても振り払う元気すらない。そんな痛々しい姿に衝撃を受けたのを覚えている。

一緒にテレビを見ていた父に私は
「どうしてあの国は食べる物がないの?」と尋ねた。

父は一瞬考え込んで、
「政治が悪いんだ」と呟いた。

子供の頃はその意味がわからなかったが、今はよくわかる。

2002年、小泉首相が訪朝し、金正日総書記と首脳会談を行った。そして、金総書記は北朝鮮による拉致被害者の存在を明かした。

世間が北朝鮮に対して怒りに震えている頃、私はカメラマンとして写真週刊誌の記者とともに朝鮮総連の幹部に会って話を聞く機会があった。

幹部によると、日本人の拉致は総連も深く関わっていたそうで、当時は非合法なことを専門に行う部署があったことを認めた。私も記者も大きな衝撃を受けた。

インタビューの最後に記者は
「今の金正日体制についてどう思うか?」と尋ねると、幹部は
「私は会社を経営していて、従業員とその家族を養わねばならないと思っている。彼らが食べていけないということは経営者として失格を意味する。国民が食べるものもなくて飢えているのも同じことでしょう」と語った。

今、というか随分以前から日本にも三度の食事を摂ることのできない人がいる。
「自己責任だ」、「努力が足りない」という人もいるだろう。

しかし、私はそうは思わない。やはり、「政治が悪い」のだ。と書くと、「サヨク」だとレッテル貼りされるかもしれないが、イデオロギーは無関係である。もっと、シンプルに考えればよい。

飢えた同胞を見て見ぬふりをするのか。それとも手を差し伸べるのか。

国民を飢えさせている指導者や政党に「NO!」を突きつけるのか。それとも黙って従うのか。

日本人なら答えは決まっているはず。ということを考えていた。