永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

きしころのシーズン、到来。

f:id:nagoya-meshi:20190516182218j:plain昼、あまりにも暑かったので、きしころを食べた。私にとって、夏の訪れを実感するひとときである。あ、喫茶店の壁に貼られたアイスコーヒーのポスターを見たときにも夏を感じるね。

写真は、セルフうどんチェーン『どんどん庵』のきしころ。つゆがキリッと冷えていて、旨い。たっぷりとネギを入れて、それを天ぷらにのせて食べるのが永谷流。あと、ショウガではなく、ワサビを選択するのもね。

きしころは、麺もつゆも冷たいイメージがある。だから、「きしころ=冷やかけ」とか「きしころ=冷やしぶっかけ」という意味に解釈している人も多い。ちょっと、冷静に考えてほしい。

きしころの発祥は定かではないが、戦前からあったとすると、当時、「冷やす」という概念はなかった。何しろ、冷蔵庫が普及するのは戦後。当時は氷も高かったので、「冷ます」のが正しい。

だから、店によっては、常温のきしころが出てくるところもある。長い歴史のある店に多く、それはそれで美味しい。というか、歴史に思いを馳せながら食べるとなお旨い。つまり、きしころの解釈は、「温かくないきしめん」が正しい。

きしころが面白いのは、麺やつゆの温度のみならず店によって千差万別であること。拙ブログ(スマホ版)のカバー写真は、名古屋市東区『川井屋本店』のきしころ。PCでご覧になっている読者様にもわかるように、写真を載せておこう。

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具材は、甘辛く煮た揚げと朱色の名古屋かまぼこ、ホウレン草、花がつお。別皿で薬味のネギと大根おろしが付く。きしころでありながらつゆも具材もかけきしめんとまったく同じなのだ。意外とこのタイプのきしころは少ない。これも長い歴史のある店に多い。

具材は同じでも、つゆを使い分けている店もあるし、かけところでつゆも具材も変えている店もあるのだ。って、実はこちらの方が多数派。ざるそばに使うつゆをベースにしてころ専用のつゆを作っているのだ。具材も天かすやカイワレ大根、刻み海苔、ワカメと、本当に多種多様。

それは、きしころのベースとなるのが「温かくないきしめん」であるからにほかならない。どの店も自由自在に作ることができるのだ。できることなら、店ごとのこだわりを詳細に取材してみたい。雑誌やネットに限らず、テレビでもいいな。ってことで、お仕事のオファーをお待ちしております。