永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

ナガヤ、動きました。

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ナガヤ、動きました。

いつもお世話になっているお店のテイクアウトメニューを撮らせていただいた。照明機材とカメラをセットして、露出を測って、シャッターを切る。これまで何千回とやってきたことだが、一つ一つ、動作をするたびに熱いものが込み上げてくる。まるで、「お祭り男」に復帰した宮川大輔のように(笑)。

やっぱり、何よりも私は写真が撮りたかったのだ。それを心底実感した。そりゃ自宅でも機材を広げて撮ろうと思えばいつでも撮れる。でも、現場での緊張感は、やはり現場でしか味わえないのだ。

コロナ禍で私も仕事が激減した。経済的に大きなダメージを受けている。が、仕事場は自宅兼だし、従業員もいない。おまけに女房はフルタイムで働いている。飲食店を営んでらっしゃる方と比べれば、まだ固定費は少ない。

だから、今回の撮影でお世話になっているお店の方を少しでも励ますことができれば……なんてことを考えていた。私自身がそれどころではないのに、まったく思い上がりも甚だしい。笑うなら笑えばよろしい。

でも、励まそうと思っていた私が励まされた。テイクアウトメニューの充実もそうだが、営業時間の変更など余儀なくされた中で思いつくだけの最善策を講じている。そんな姿に心を打たれた。

私はどうなのか。はたして今の状況でベストを尽くしていると言えるのか。暇を持て余して、ただ、時が過ぎるのを待っているだけではないのか。いったい、いつ新型コロナが終息するかなんてわからないのに。自分が恥ずかしくなった。

今回、撮影するカット数は制限しなかった。照明機材をセットしたら、5カット撮るのも10カット撮るのも同じこと。事前に電話で

「撮影してほしいものがあれば、どんどん持ってきてください!」と、伝えておいたところ、本当に沢山の料理を用意してくださった。全然問題ない。むしろ、1枚でも多くシャッターを切らせていただいたことに感謝している。

この期に及んでケチくさいことなんて言いっこなしだ。「アイツは自分を、自分の技術を安売りしている」と後ろ指をさされても一向に構わない。むしろ、そんなヤカラが気の毒にさえ思える。なぜなら、私はお金よりももっと大切なものを沢山いただいたのである。

前にも書いたが、新型コロナウイルスは人々の命を奪うだけではなく、人との繋がりやコミュニティも破壊する。このコロナ禍を、そして、アフターコロナの世界を生き残るのは、心が富める者だ。

 

※写真は本日撮影した中の1枚。テイクアウト用のメニューではないので焦ったが(笑)、あり合わせの機材で何とか撮影できたのでノープロブレム。