よく「名古屋めしは足し算」といわれるが、それは先人への冒涜以外の何ものでもない。足し算ならば別々に食った方がよっぽど旨い。彼らは1+1=2ではなく、∞×∞=∞を作りたかったのである。「名古屋めし」というコトバからは、そんな深い意味を汲みとることができないと思うんだ。#名古屋めし
— 永谷 正樹 (@shuzaiya) 2021年6月20日
昨日、私はこんなツイートをした。
今回のブログは、これをもう少し深堀りしようと思う。
とんかつ+味噌だれ=味噌かつ、海老天+おにぎり=天むす、という具合に「名古屋めし」の特徴は足し算に例えて説明されるケースが多い。何を隠そう、私もそうやって書いてきた。
しかし、それは間違いだった。Twitterにも書いた通り、先人への冒涜である。
そもそも、作り手はそんなことを1ミリも考えていない。
名古屋・大須に『すゞ家』というとんかつが旨い洋食店がある。私のお気に入りの店だ。ここの味噌かつ(トップ写真)に使われている味噌だれには砂糖の代わりに干し柿のペーストで甘みをつけている。さらにコクを出すためにゴマのペーストもくわえている。
なぜ、そこまでこだわるのか。
味噌だれをとんかつと合わせたときに邪魔をしてはならない。それは当たり前だ。合わせたときに美味しくならなければならないのである。それがすべてである。
美味しくなるということは、単純な足し算からは生まれない。それぞれの持ち味を生かし合う、掛け算でなければならないのだ。
天むすも同じ。天ぷらを具にしておにぎりを握っても美味しくはない。天ぷらに軽く塩を振るから、海老の風味を引き出すのである。
店で出される料理には、料理人の知識と経験に裏付けされた知恵と技術が込められているのだ。料理人のセンスと言い換えてもよい。
私はフードライターとして、その部分に迫りたい。