永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

食レポ論。

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まずは、告知から。

「ひとりを楽しむ」をテーマとしたWebメディア『DANRO』にて、名古屋・新瑞橋『おひとりさま横丁 焼肉イーネ!×麺屋はやぶさ』を紹介させていただきました。

danro.bar

取材にご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

さて、ここからが本題。

テレビの食レポから生まれ、一生を風靡した「宝石箱や〜!」、「まいうー!」というフレーズ。それらを生み出したレポーターや芸人は一躍人気者となった。

たしかに、面白かったし、インパクトがあった。私も彼らの食レポを見て笑っていた。でも、「宝石箱や〜!」、「まいうー!」を発することで、その前の食レポ部分、例えば、味や食感、香りといった料理の感想がぶっ飛んでしまう。

彼らの食レポは、どうしても「そろそろ(フレーズが)来るか!?」という目で見てしまう。そうなると、本来視聴者に伝えるべき取材した店の、料理人のこだわりよりは二の次、三の次になってしまう。結局、視聴者の心に残るのは、料理ではなくレポーターや芸人の話芸となる。

実際、私もあるお笑いコンビとロケに行ったことがある。2人の掛け合いがむちゃくちゃ面白くて、終始笑わせてもらった。が、やはり、取材させてもらった店の印象はまったく残らなかったのだ。私は専門家として出演させていただいたのだが、その番組に私も要らないのではないかとさえ思った。

レポーターや芸人が食レポにおいて番組に爪痕を残さんがために、売れんがためにタイムリーなフレーズを発するのは仕方がないこともわかっている。でも、それは、はたして食レポといえるのだろうか。

いったい、食レポとは何だろう。取材した店の情報を、レポーターが語り部となって視聴者に伝えることだと私は思っているが、当然、語り部の表現技術も重要である。フードライターに文章の表現力が求められるのと同様に。

表現の中に「面白さ」も入ると思う。その度が過ぎるから、主役が取材した店ではなく、語り部であるはずのレポーターになってしまうのだ。

先日、『Yahoo!ニュース』でチャンカワイさんのインタビュー記事を読んだ。

news.yahoo.co.jp

チャンカワイさんは、私の好きな芸人の一人。東海テレビの『スイッチ』で彼の食レポをよく見る。ロケ先で出された料理を食べて、いつもその美味しさに感動しながらレポートている。「うわー!」という彼の驚嘆の声と表情だけで伝わってくるのだ。

彼はインタビューの中で

本音を言いたがらないのが日本人の美学だったりもしますよね。そして、職人さんはその気質が特に強い気もします。

どれだけ静かな人でも、心の中を開いたら絶対に叫びたいことはある。ましてや、自分が人生をかけて取り組んでいる野菜であったり、魚であったり、作品であったりすると、そこの思いがないわけがないんです。でも、それを声高にはおっしゃらない。

ただ、それを言いたくないわけではない。目の前の相手に対して「この人には、心を開こう」と思ったら、それこそ、堰を切ったように思いを言ってくださいます。僕は、ただただ、その役目をできたらなと思うようになっていきました。

 と語っている。取材相手の心を開いてもらうことがレポーターの役割であると捉えているのだ。さらに、

こちらがきっかけになって、心を開いてもらう。一言でも言いたいことを言ってもらったら、それが一番大切な言葉だからテレビはそこを使う。そうなると、見ている人がそれをキャッチして買ったり、行ったりしてくれる。そんな流れになったら、幸せだなと。

私とまったく同じことを考えてらっしゃる。チャンカワイさん、スゲエ。本当に尊敬する。いつか会って、食レポ論を語り合いたい。

余談になるが、私にはチャンカワイさんとソックリの料理研究家の友人がいる。彼はテレビにもちょこちょこ出ていて、東海テレビへ行ったとき、廊下でチャンカワイとすれ違ったらしい。

「すれ違った後、僕もチャンさんも振り返ってしまったんです(笑)。で、チャンさんは僕の顔を見て『なんか、すみません……』って(笑)」

チャンカワイさん、絶対にイイ人だと思う(笑)。

 

※写真は、家庭内ロックダウンの解禁後に女房と食べに行った小牧市『めりけん堂』の「めりけん堂セット」。プロのレポーターなら、このカオスなメニューをどう食レポするだろうか(笑)。