永谷正樹のなごやめし生活

「なごやめし」について書き綴ります。

自分は何ができるのか。

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歴史を遡ると、明治維新や広島、長崎への原爆投下、そして敗戦。日本人にとって、大きな転換期となる出来事があった。東日本大震災もその一つではないかと思っていた。当時の世の中は、まだリーマンショックによる不景気から抜け出せずにいた。震災はそこに止めを刺すような形となった。

震災が起こってまもない頃、東京の出版社を訪れたときにファッション誌の編集者と話す機会があった。

「ブランド物が大好きだったウチの雑誌の読者が震災後、靴やバッグをリサイクルショップへ売りに行ったって。すべてのものが破壊されて、津波に流されてしまう映像を目の当たりにして、ブランド物を後生大事にしていても仕方がないって思ったみたい」と、その編集者は語った。

ブランド好きの読者は、きっと1円でも多くカネを稼いで、ブランド物に身を包むことが幸せだと思っていたのだろう。震災によって自身の価値観に疑念を抱いたのだ。それは彼女だけではなく、日本人の多くがそう感じていたように思う。

至るところで「絆」という言葉を見聞きしたのもそれを物語っていたし、全国で「子ども食堂」や「無料塾」ができたのもその頃だった。

震災から10年が経とうとしているときに、全世界で新型コロナウイルスが猛威を振るった。これは日本のみならず、世界規模での大転換期だと私は思っている。

東日本大震災から東北の、そして、日本の復興を全世界に知らしめるための「復興五輪」であったはずだ。菅首相は、五輪を「人類が新型コロナに打ち勝った証」と、付け加えた。やっと医療従事者にワクチンの摂取がはじまったばかりで、まだまだ克服できていないというのに。

政府としては、経済活動を止めることはできない。それは理解できる。だから私も一生懸命働いている。しかし、新型コロナで職を失い、心を病んだり、自ら生命を絶つ人も多い。「絆」を学んだ震災から10年経っても、お上は弱者には手を差し伸べない。「自助」だそうだ。

と、政府への不満をブログに書いていたら、

天皇陛下がお誕生日に際しての記者会見をなされた映像がニュースで流れていた。誠に畏れ多いが、

陛下のお言葉をここに引用させていただく。少し長くなるが、是非読んでいただきたい。

日本の歴史の中では,天変地異や疫病の蔓延など困難な時期が幾度もありました。これまでの歴代天皇のご事蹟をたどれば,天変地異等が続く不安定な世を鎮めたいとの思いを込めて奈良の大仏を作られた聖武天皇,疫病の収束を願って般若心経を書写された平安時代の嵯峨天皇に始まり,戦国時代の後奈良天皇,正親町天皇など歴代の天皇はその時代時代にあって,国民に寄り添うべく,思いを受け継ぎ,自らができることを成すよう努めてこられました。

その精神は現代にも通じるものがあると思います。皇室の在り方や活動の基本は,国民の幸せを常に願って,国民と苦楽を共にすることだと思います。そして,時代の移り変わりや社会の変化に応じて,状況に対応した務めを考え,行動していくことが大切であり,その時代の皇室の役割であると考えております。

国民を思い,国民に寄り添う点で,災害で被災された方々,障害者や高齢者,あるいは社会や人々のために尽くしてこられている方々にも心を寄せ,ねぎらい,励ましていくことはとても大切なことです。それは,私と雅子二人の自然な気持ちであるとともに,皇室としての大事な務めであるとも思います。この1年は,コロナ禍に翻弄されてきました。愛する方を失ったご家族やご友人のお悲しみはいかばかりであったことでしょう。心から哀悼の意を表します。また,コロナ禍の閉塞感からでしょうか,自ら命を絶つ人が増えていることも極めて痛ましいことで,皆で何とか防がなくてはなりません。その一方で,強い使命感を持って医療に取り組んできた方々や保健所などで現場の対応に当たってきた関係者を始め,高齢者や障害者など,社会的に弱い立場にある人々を支えてきた関係者や,子供食堂のような,困難な状況に置かれた子供たちを支援してきた関係者など,多くの方々からお話を伺う機会を得,皆さんの有り難い尽力に思いをより深く致しました。このような方々に対し,国民の間で感謝の念を広く共有することができた1年となりました。

 陛下ご自身が、国民のために自分は何ができるのかと自問自答されているのである。震災のときのように、被災者を慰めるために直接被災地へ足を運ぶことができないもどかしさはあったと思う。

ニュースでは、これからの御巡幸はオンラインで行われるだろうと報じていた。きっと、多くの人々が励まされると思う。

あえて太字にさせていただいたが、

陛下が「皆で何とか防がなくてはなりません」と、おっしゃっているのである。私はこのお言葉を聞き、背筋が伸びる思いになった。政治家や役人はお言葉をどう受け止めたのだろう。とくに形だけとはいえ

天皇陛下から総理大臣を任命された菅さんはどう思ったのか知る由もないが、承詔必謹であるべきだ。国会でくだらないことをダラダラと話しているヒマはない。政治家も役人も「自分は何ができるか」を自問自答せよ。

先日、ある外食チェーンの本部を取材した。コロナ禍で売り上げは、コロナ前の70%減となったそうで、考えられるだけの、ありとあらゆる手を講じて従業員の生活を守っている。しかも、

「コロナ前は効率や利益を優先させていたところがありました。今は取引先と心を通わせることを大切にしています」と、担当者は語った。コロナで大きな損害を被ったが、商売の原点に立ち返ることができたことを喜んでいる面もあった。私は話を聞いていて泣きそうになった。

フードライターとして、カメラマンとして、私のやれることは、このように頑張っている企業や店、人を文章と写真で応援することであると実感した。自分は何ができるのか。皆で考えていこうではないか。