永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

旨いものは心を豊かにする。

丸山から電話があったのは、昼くらいだったかな。

「今日、S本君が名古屋に来るんだって」と、丸山。S本君は福岡の“温泉カメラマン”。その昔、mixiのグループ「写真で食う」で出会い、リアルな友人になった。彼は料理も撮影するので、会うたびに刺激をもらっている。

今日は午前中にアポ取りをサクサクっと済ませたこともあり、午後からであれば空いている。丸山に自宅まで迎えに来てもらい、ソニーストア名古屋に集まることに。S本君もプロサポート会員なのだ。

ソニストでくっちゃべった後、大須で中古カメラやジャンクPC巡りをして、『コンパル』でお茶。

腹が減ってきたのでS本君に何か食べたいものはあるのか聞いてみると、「カレーか町中華」とのことだったので、台湾ラーメンが有名な志賀本通の某店へ向けて車を走らせた。

帰宅時間と重なっていたため、渋滞をくぐり抜けてやっと到着したものの、なんと臨時休業。そこで、『光村』のかき揚げ丼を思い出した。

いやー、『光村』は本当に久しぶり。前はいつ来たのか覚えていないほど。まぁ、コロナ禍でもあったからね。

注文したのは、もちろん「かき揚げ丼」。材料代や燃料代などの一斉値上げによって、1500円になっていたが、それでも十分に安いと思う。それこそ、東京でここと同じクオリティのものを食べようと思ったら、確実に倍近くになると思う。

10〜15分ほど待って、目の前に運ばれたのがこれ。

相変わらず、すごいボリューム。私とS本君はカメラを向けていたが、丸山は「写真撮るよりも……オレは食う!」と目の色を変えて一心不乱に箸を動かしている。

私もパパっと撮影して、かき揚げに食らいついた。うん、やっぱり旨い。エビのプリプリ感と衣のサクサク感、タレの味、香りがたまらない。何物にも代え難い、唯一無二の味なのだ。

途中でぬか漬けの大根とキュウリの漬物をつまんだり、しじみ汁をひと口飲んだりすると口の中がリセットされて、また美味しく食べられる。この2つはかき揚げ丼には欠かせない必須アイテムなのである。

あまりの旨さに食べ終わった後、なぜか私たちは黙り込んでしまった。皆、余韻を楽しんでいたのだった。満たされたのは食欲だけではなく、使い古された言葉で恐縮だが、心も存分に満たされた。

やはり、旨いものは心を豊かにする。それを実感した。