永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

この国は人材しかない。

私が台湾へ取材旅行に行ったのは、コロナ前の2018年。

当時、台北に北京飯と台湾ラーメンの『半熟堂』を出店していた『つけめん舎 一輝』の杉浦正崇さんから、台湾の人々のライフスタイルについて、こんな話を聞いた。

「普段は屋台とかで1食80円くらいに抑えて、メディアやネットで話題の店に行けるのは週イチか月数回」と。

その背景には所得の低さ。当時、『半熟堂』を含めて私が取材した台北にある名古屋発の飲食店は、台湾で暮らす一般の人々からすればお金持ちが行く店だったのだ。

「結婚と子ども、マイホーム、マイカー。台湾ではその中のどれか1つは諦めなければならない」と、杉浦さんは付け加えた。私の息子たちが社会に出る頃、日本は台湾と同じような状況になるかもしれないと思った。

あれから4年が過ぎた。長男は今年から社会人となった。次男は来春、社会に出ていく。息子たちは大学進学の際に奨学金を借りている。それも高級車が買えるくらいの額。

返済のことを考えると、結婚も二の足を踏んでしまうだろう。マイホームなんてとんでもない話だ。マイカーも10年落ちの中古車しか買うことができない。

台湾経済は絶好調だと聞く。台湾の上場企業20社の平均年収は、日本円にして1816万円。一方、日本の場合は、1626円。今や完全に追い抜かれているのである。

失われた20年とか30年とか言われるが、いちいち過去のことを責めるつもりはない。肝心なのは、この先、10年後、20年後にこの国をどのようにして復活させるかだ。

国土から石油や天然ガス、鉱物などの資源が出る国は、それらを採掘する。広い国土を生かして農作物をつくっている国もある。いわば国ごとの特産品を他国へ売って生計を立てているのである。

では、この国の特産品は何か。自動車?工業製品?アニメ?漫画?ゲーム?いろいろ挙げられるが、すべて「人」に行き着く。この国は人材しかないのだ。ならば、世界に通用する人材育成をするしかない。

子供たちの学力が低下しているのなら、高い給料を払ってでも優秀な教師を雇えばよいし、クラスの運営が難しければ、1クラスに2人の教師を常駐させればよい。人件費は2倍になるが、防衛予算を2倍にするよりも賛同を得られるだろう。

息子世代やその子ども、私にとってはまだ生まれていない孫が安心して暮らすことのできる世の中にしたい。そのためには教育の改革は急務だと思うのだが。