永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

衝動。

今朝、何気なくインスタを見ていたら、むちゃくちゃソソられる料理の写真に目を奪われた。分厚く切ったチャーシューとポテトサラダをメインに、真っ黒なつゆでいただく中華そばと炊きたてツヤツヤピカピカのご飯、漬物が付くランチだ。
位置情報もタグ付けされていたので、タップしてみると、店があるのは三重県桑名市。どうしても食べたいという衝動に駆られて、ウルトラ集中力で原稿に取りかかった。

原稿は昨日までに半分ほど書いてあり、今日は残り半分を終わらせようと思っていた。が、言い換えれば昨日一日かけても半分しか書けなかった原稿をはたして半日でできるのか。正直、自信はなかった。

ところが、PCに向かうなり、エンジン全開(笑)。それは目の前にニンジンをぶら下げた馬の如し(笑)。9時に書きはじめて、きっかり12時に書き終えた。その間、一歩も席から離れることはなかった。

私が行きたいと思った店は、桑名市の近鉄益生駅近くにある『よしむら屋』という麺類食堂。私がインスタで見たのは、平日の11時〜14時までの限定ランチ、その名も「ちょっとしたお昼ごはん」の「C あぶり焼豚」。

まず、名前がいいよね(笑)。「ちょっとした」というのは「ちょっとしたものしかありませんがよろしければ」的な謙虚さが漂っているではないか。しかも、これで値段は600円。むちゃくちゃ良心的である。

とはいえ、私の自宅から桑名まで高速を使えば約45分。高速代はETCを使って片道1620円。往復だと3000円を超える。600円のランチを食べに行くのに往復3000円も使うのはさすがに馬鹿すぎる。

ってことで、下道で行くことにした。ちなみに所要時間は高速の倍となる1時間半。往復3時間かけて600円のランチを食べに行くのも馬鹿すぎる話だが(笑)。

到着したのは、13時半。きっかり1時間半かかった。さすがにこの時間であれば駐車場は空いているだろうと思いきや、まさかの満車。幸運なことにすぐに空いたので止めることができた。店内へ入ると、1席だけ空いていた。やはり、地元では人気の店なのだ。

20分ほど待って出されたのがトップの写真。すごくボリュームがあるように見えるが、ご飯の茶碗も中華そばの丼もやや小さめ。

まずは具材がネギだけの中華そばの麺を啜る。うん。想像していた通りの味。つゆはムロアジのダシにたまり醤油を合わせた名古屋風。たまり醤油ならではのコクとほのかな甘みがくセになる。中華麺との相性も良い。

1/3ほど食べたところで、メインのおかずである「あぶり焼豚」を中華そばに投入。肉の旨みがつゆに染み出して、どんどん旨くなっていく。肉とダシが相まった複雑な旨みが口いっぱいに広がる中、ご飯を頬張ると、米粒に旨みが染み込んでいく。もう、たまらん!

ご飯は炊き加減が完璧で本当に旨い。ちなみにご飯の大盛りは+80円。大盛りにしておけばよかったと少し後悔した。

「あぶり焼豚」の残り1枚はカラシを付けてかぶりついた。炙ってあるのでジューシーな肉汁が口の中にほとばしる。その肉汁をご飯に吸い込ませたくなり、ご飯を思いっきり頬張る。これもたまらん!この一連の動きは無限にループできるとさえ思ってしまう。

合間にポテトサラダをつまむと、マヨネーズの酸味で口の中がリセットされる。本当によく考えられていると思った。

腹ペコだったので、あっという間に平らげてしまったが、大満足だった。わざわざ来た甲斐があった。こういう店こそ後世に伝えるべきだと思った。

帰りも下道。効率第一主義の人からすれば、今回の私の行動は意味不明・理解不能だろう。別にわかってもらわなくても結構だが、この3時間、いや、食事の時間を含めると3時間半は私にとって決して無駄な時間ではない。

3時間半、食事に費やしたのであれば、3時間半余分に働けばよいのだ。それだけ。何よりも気持ちがリセットされて、次の原稿の執筆意欲も湧いた。衝動に対して忠実に行動するというのもたまにはよいかもしれない。