人の名前には親の思いや願いが込められている。
私には2人の息子がいる。長男が生まれる前、私の名前「正樹」の「樹」という文字を受け継いでもらおうと思った。
名前の画数はまったく考えず、候補を挙げては消しを繰り返した。そこで長男にはスケールの大きな人間になってほしいという願いを込めて「大樹」と名付けた。
読み方は「だいき」でもなければ「たいじゅ」でもない。女房の名前「裕美(ひろみ)」の「ひろ」をもらい、「ひろき」と読ませることにしたのだ。
長男は細かいことを気にしない、名前通りの大きな人間力を持った人に成長したと思う。「鳶が鷹を生む」とはまさにこのことである。
次男にも「樹」がつく名前にしようと決めていた。というか、それ以前に長男が「大」なので自然に「和」という文字が心に浮かんだ。2人の頭文字を合わせると「大和」になるからである。
これも、この国の役に立つ人になってほしいという思いが込められている。別に政治家や役人になってほしいというわけではない。私利私欲のために生きるのではなく、自分の周りの人に喜ばれる存在であってほしいという意味だ。
次男「和樹(かずき)」の「和」は、「和を以て貴しと為す」が由来。これは聖徳太子が定めた十七条憲法の第一条に出てくる言葉で、「みんなが相手を尊重しあい、認めあって協調することがなによりも尊いものだ」という意味である。
次男がいるだけでその場から争いごとがなくなり、いがみ合っていた者同士でも仲良くなる存在になってほしいという願いを込めて「和樹」と名付けた。
次男はその名の通り、争いを好まない、やさしく愛深い人に成長した。本当に名は体を表していると思う。
ちなみに私の名前「正樹」の由来は、正しく真っ直ぐな人になってほしいという意味ではない。近所に住む人の息子さんが京都大学へ入学するほど優秀で、その息子さんの名前をそっくりそのままいただいたらしい。めちゃくちゃ安直(笑)。
残念ながら、親の期待を大きく裏切ることになってしまったが、息子たちが立派に成長したからチャラにしてほしい(笑)。
「正樹」という名前でよかったこともあった。取材拒否の店のご主人がたまたま私と同じ名前だったことから、何かしらの縁を感じていただき、取材をさせてもらえることになったのだ。それが私のお気に入りの鰻屋『うな正』の伊藤正樹さんだ。
彼と話をしていると共感できる部分が多々ある。やはり、「名は体を表す」のだ。