永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

自ら動くこと。

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先日、Twitterのフォロワーさんからメッセージをいただいた。ライターとして仕事をされているようで、「○○(媒体名)に寄稿するにはどうすればよいのか?」という問い合わせというか、質問だった。

媒体からオファーをいただけるまでの経緯は人それぞれだと思う。私の場合、フリーになったのが1995年。バブルはとっくに崩壊していたが、TVに広告を出していたスポンサーが経費削減で雑誌に出すようになり、出版バブルといわれる時代でもあった。

当時、私は26歳。雑誌の仕事は、編集プロダクションで2年半しか経験していない。とはいえ、ブラック企業だったので(笑)、体感的には倍の5年くらい働いていたと自負していた。

フリーランスとなるにあたって、当時売れていた「宝島」と「SPA!」、「週刊プレイボーイ」の3誌で絶対に仕事をすると決めていた。って、いくら自分がそう思っていても、相手がいる話である。

例えば、好きな人ができて、その人と付き合いたいと思ったらどうするのか?遠くから眺めつつ、思い続けたとしても、絶対に無理だろう。だって、相手は自分のことを知らないのだから。

それと同じで、まずは相手に自分の存在を知ってもらうこと。自分が思いを寄せている人に電話番号やメアド、LINEなどの連絡先を聞くにはハードルが高いが、雑誌には裏表紙に編集部の連絡先が載っている。こんなの、好きな人の背中に電話番号が書かれているようなものだ(笑)。「CALL ME!」みたいな(笑)。

私はその連絡先に電話して、会いに行っただけ。フラれた、いや、門前払いされたのはマガジンハウスの一社だけ。いくらこちらが思いを寄せていても、相手が不要と判断したのなら仕方がない。後を追うことはしない。

私のような地方ライター(カメラマン)の上に経験の浅い者でも会ってはくれるのだ。ただ、厄介なのは、会ってくれたからといって、仕事のオファーはもらえない。恋愛に例えると、デートには応じるけど、キスはおろか、手もつないでもらえないみたいな。

では、どうするのか。恋愛ならば、自分がいかに相手のことを思っているのかを熱意を込めて伝えるだろう。雑誌やWebメディアの編集部の場合は少し違う。もちろん、熱意は大切だが、それよりも重要なのは、編集部が求める、ひいてはそのメディアの読者が求める企画を提出することだ。

私は『宝島』で仕事をするまで1年かかった。毎日のように企画を送り続けて、ようやく報われたのだ。もちろん、『SPA!』や『週刊プレイボーイ』にも読者に合わせた企画を送って、それを通したから仕事をすることができた。

企画が通って、何度か仕事をしているうちに信頼関係が生まれる。すると、特集企画の中に私が得意とするジャンルのものがあれば、編集部から仕事の依頼がくる。こうして今の仕事を25年間やってきた。

Twitterを見ていると、駆け出しのライターさんが自分がやりたいと思っている編集部に連絡を取っただけで同業と思われるフォロワーさんが「スゴイ!」とか「その行動力を見習いたいです」というコメントが数多く寄せられている。

それは「スゴイ」ことなのか。書いてみたいと思うメディアがあるのに、連絡を取らないのは、断られるのが怖いのか。そんなにも自分を否定されるのが嫌なのか。否定されたってイイじゃないか。あまりにも企画が通らなかったので、私は「逆にどんな企画なら通るんですか!?」と、聞いたこともあった。そこまで図々しくなってもよいのだ。

なぜ、ここまでアケスケに書くのかというと、実際に実行する人がいないからである。五十路のおっさんライターである私からすれば、編集部に連絡したというのは、まだスタートラインにも立っていない。企画を送って、初めて道が開けるのである。Webライターはよくわからないが、メディアのライターにとって、企画が生命線なのである。それを絶対に忘れてはならない。自戒も込めて。

※写真は、昨日の夜に某店で食べた「厚切りタン」。このところ、焼肉が続いているが、実はお仕事。HP経由でオファーをいただいたのである。メディアで仕事を続けていると、このようなメリットもあるのだ。ちなみに明日も焼肉(笑)で、1日明けて金曜日も焼肉(笑)。