永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

少数派。

以前に取材でお世話になった喫茶店に立ち寄ったときのこと。

「最近、取材のオファーはありましたか?」と、ママさんに聞いてみた。まぁ、社交辞令のようなものだ。

あ、この店との出会いは10年くらい前。『おとなの週末』の覆面取材で店の名物メニューが本当に美味しいと思ったから取材を申し込み、快諾していただいたのがきっかけだった。

たぶん、ここを初めてメディアで紹介したのは、私である。その後、雑誌のみならず、書籍やwebメディア、テレビなどの取材が相次いでいたのだ。

「あるにはありますよ」と、ママさん。って、何じゃそりゃ!?

聞いてみると、webメディアを中心に取材のお願いは数多くあるものの、そのほとんどが電話での取材だという。そして、ママさんから耳を疑うような一言が。

「ナガヤさんのように取材に来るライターさんは少数派かも」

えっ、少数派なの!?オレ。いやいや、取材は現場へ行ってナンボでしょうが。飲食店の雰囲気も実際に行かないとわからないし、店主のキャラクターも電話では伝わらない。リアルに対面してこそ得られるものは山ほどあるのだ。

webメディアの記事にプレスリリースを丸写ししたようなものが多いのは、取材へ行っていないからだろう。私自身、取材とは店のHPやプレスリリースには書いていないことをインタビューによって引き出すことだと思っている。

取材という行為を料理に例えると、食材の仕入れである。本当に美味しいものを作ろうと思ったら、食材を通販で仕入れるようなことはしないだろう。自分自身の目で見て買うし、理想をいえば産地まで足を運んで生産者のことも知った上で買う。取材もそれと同じだ。

いや、ちょっと待てよ。ひょっとすると、取材へ「行かない」のではなく、経費が出ないため「行けない」のが正しいかもしれない。もしもそうだったとしたら、自腹を切ってでも取材へ行くとよい。電話取材とは比べものにならないほどの情報量はもちろん、経費以上のものも得られると断言できる。

そして、取材へ行くことの重要性を編集担当に訴えるのだ。それでも「経費がかかる」だの何だのと難色を示すようであれば、そんなメディアで仕事をするのをやめてしまえ。正直、そんな糞メディアにしがみついていても、何のメリットもない。

メディアで仕事をするライターの皆様、取材へ行こう。