永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

プレスリリース。

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大学で非常勤講師だった頃、担当していたのは「メディアリレーションズ概論」という講義だった。

「ナガヤ先生には、メディアリレーションズ概論をお願いします」と言われ、「ハイ!」と返事をしたものの、その意味がわからず帰宅してからググった(笑)。

メディアリレーションズとは、企業がメディアと良好な関係を築くことであり、マスコミ対応という意味合いもある。

例えば、広報担当者であれば、メディアが欲するモノを提供することである。つまり、メディアリレーションズとは、企業側のメディアへの働きかけ方、ということになる。

広報の仕事をめざす学生たちが多かったので、私はメディア側から見たメディアリレーションズについて考えたことや思ったことを話した。最初の講義では、

「自分とこの商品をメディアで紹介してほしいと思ったらカネを出せ!何とかオブ・ザ・イヤーなんて現ナマが飛び交ってんぞ!」と、話したところ、ツカミはOKだった(笑)。

「でも、君たちが就職する会社は、きっとメディアを接待する予算もないだろ?それならば、メディアが思わず取材したくなるプレスリリースの書き方をオレが教えてやる!」と、プレスリリースの完成をゴールとしたのである。

プレスリリースの書き方を教えていた私だが、プレスリリースを見て取材へ行ってみたい!と思ったことはほとんどない。それだけ魅力あるリリースがないし、「ノセられてたまるか!」という気持ちもある。

ところが、SNSを見ていると、プレスリリースをコピペして、写真も提供してもらったものを使っている記事がやたらと目につく。

これもライターの仕事なのだろうが、やっていて楽しいのだろうか。それとも仕事と割り切っているのだろうか。そりゃ資料だけ見て書けば、時間もお金もかからない。実に効率的である。

でも、ライターの仕事は、取材する前に本やネットで下調べしなきゃならないし、構成や表現方法を考えたり、そもそも面倒くさいものなのである。それが楽しいと思えるのがライターだと思う。

プレスリリースが取材するきっかけになるのは決して悪いことではない。プレスリリースに書いていないことをいかに取材で引き出すのかが、ライターとしての腕の見せ所なのだ。