永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

炎上。

一昨日、取材でお世話になったお米屋さんからtwitterなどのSNSに「皆様へのお詫びとご報告」と題する投稿があった。

私は取材をきっかけにtwitterの相互フォローの関係にあるのだが、そういえば、ここ数日ツイートしていない。いったい何の「お詫びとご報告」なのだろうと思い、アップされていた画像をクリックすると、大変なことになっていた。

事の発端は、今月、三重県桑名市の多度大社で行われた「上げ馬神事」だった。上げ馬神事は、地元の若者が馬に乗って急な坂を駆け上がり、頂上にある壁を乗り越えた回数で農作物の作柄などを占うというもの。私もテレビのニュースで見たことがある。

お米屋さんは、上げ馬神事の馬の共同馬主になっていて、その馬が壁に近いような坂に激突して亡くなってしまったのだ。お米屋さんは共同馬主であり、上げ馬神事の前から馬の写真や神事の準備の様子をSNSにアップしていたため、何百という人から厳しいコメントが寄せられ、いわゆる炎上という状況にあったのだ。

多度大社の近くで生まれ育ったお米屋さんにとって、上げ馬神事は日常であり、共同馬主として携わることができるのは誇りでもあったと思う。しかし、上げ馬神事を知らない人にとっては、馬への虐待に見えても仕方はない。「お詫びとご報告」にもその意識の差について書かれていた。

たしかに動物愛護という観点から、神事そのものを廃止するか、別の形にするのがよいと思う。お米屋さんに抗議する気持ちもわかる。多度大社や桑名市役所にも抗議が殺到しているのも確認している。

お米屋さんは、「お詫びとご報告」の中で、本年をもって共同馬主への参画を見合わせること、すべてのSNSアカウントを停止することを告げている。それでもまだ抗議の声は止みそうにない。逆に、これ以上、お米屋さんに何を求めるのか。土下座すれば許すのか。土下座したところでまた何か言われると思う。

しかし、SNS上だけならまだしも、電話での抗議やGoogleの評価に怒りをぶつけるのはいかがなものかと思う。結果的に店の営業もままならず、現在は店を閉めている状態だ。ネット通販も休止を余儀なくされている。

私が取材に行ったとき、お米屋さんはSNSを見たのをきっかけに店へ来てくれるお客さんにとても感謝していた。実際、お米屋さんのツイートからは、減少の一途を辿る米食を何とかしたいという気持ちが溢れていた。

たった一度の失敗、たしかに失敗は失敗でも大失敗だが、こんな真面目にお米と向き合うお米屋さんを失うのは実にもったいない。再起されることを私は願っているし、私で役に立てることがあれば、何でもやらせていただこうと思っている。