先日訪れたお店のオーナーから興味深い話を聞いた。
「最近では電話までかかってくるんですよ。『私、インスタグラマーをやっていて、フォロワーは○万人います』って」
インスタグラマーが飲食店に電話?いったい、何の用件かと思った。オーナーはこう続けた。
「『私が料理をインスタへ投稿すれば、フォロワーさんたちが来てくれます』って。一投稿につき、○○○○円って値段も決まっているみたいです」とのこと。
話を聞いて、スゴイと思った。そりゃ、○万人からフォローされるまでには、努力も苦労もあっただろう。
「もう、そうなるとコンサルですよね。でも、コンサルの場合は原価や回転率など緻密に計算しますが、それはやらない。裏付けされているのはフォロワー数だけ。何か違うと思うんです」と、オーナー。
今やインスタによるセールスプロモーションは当たり前だし、コロナ禍で売り上げが伸びずに困っている店にとっては救世主かもしれない。需要と供給が一致しているから、その商売が成り立っているのだろう。
仮に、私にフォロワーが5万人いたとしたら、それをウリにコンサルのような商売をするだろうか。いや、しないだろうなぁ。
私たちカメラマンは、高いお金をかけて機材を揃えて、素人では撮れない写真を撮り、その対価としてクライアントとしてギャラをいただく。まったく、向いている方向が違うのである。
もちろん、インスタグラマーたちもフォロワーたちが「行きたい!」と思うような写真を撮る技術は必要だろうが、それは照明がどうとか、レンズがどうといった話ではない。スマホでキレイに見えればよいのだ。
さらに、私はライターという立場で、メディアやこのブログにお店や料理のことを書くことが多々ある。その大前提に、取材するお店やそこで働く人々へのリスペクトがある。インスタグラマーの皆様には、『アイフル』のCMではないが、「そこに、愛はあるんか?」と聞いてみたい。
編集プロダクションで働いていた頃、私は風俗ライターのピエール・ナメダルマンこと(笑)、舐達磨親方こと(笑)、島本慶さんが大好きだった。彼はありとあらゆる風俗を体験し、ありとあらゆる性病に罹ったという。そこに風俗店への、風俗嬢への愛を感じざるを得ないのだ。
また、昔の『おとなの週末』編集部には、松葉杖と車椅子があった。編集部員は朝食以外、食事はすべて覆面取材だったため、痛風と糖尿病が蔓延していたのである。松葉杖と車椅子はいつ発作が起こってもよいように常備しているのだ。
そんな編集部は日本全国どこを探しても見つからないだろう。控えめに言ってバカすぎる(笑)。でも、私を含めたそんなバカたちがガチンコで旨いか否かを判断して、今までにないグルメ情報誌を作ってきたのである。
私はフードカメラマン兼ライターであり、飲食店取材を飯のタネにしている。それは間違いない。しかし、飲食店から、ましてやコロナ禍で苦しい思いをしているお店からお金をもらおうとは思わない。
お互いにお金が介在しない、対等の立場だからこそ、面白い人間関係が築けているのだと思っている。グルメ取材を通じて出会った人々は私にとって宝物であり、お金に替えることはとてもできないし、やってはいけない。そこに、愛があるからである。
※写真は、昨日の昼に作ったチャーハン。具沢山で美味しかった♪