永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

どこを向いて仕事をしているのか。

f:id:nagoya-meshi:20210726223202j:plain

今や風俗産業はすっかり下火になったが、90年代は週刊誌で毎週特集が組まれるほど盛り上がっていた。

昔、編集プロダクションで働いていたとき、何とか雑誌で採り上げてもらおうと、頻繁に電話をかけてくる風俗店の店長がいた。内容はというと、

「こんなコース(プレイ)を思いついたんですけど……」というもの。

それで「面白い!」と思ったら、すぐに企画書にまとめて編集部へ送っていた。ライターにとって、いちばん大変なのは、ネタ出しなのだ。それが向こうからネタが転がり込んでくるわけなので、「ラク」ができるからだ。

それは風俗業界に限った話ではない。デカ盛りや激辛をウリにしている店も同じようなことをしている。普段、店でお客に出しているものではなく、より過激にアレンジしたものをテレビ用に作っているのだ。

それはテレビ局が、店を紹介することとバーターで特別なメニューを作ってほしいとお願いしていることも考えられる。店も頼まれれば、悪い気はしないだろう。

何しろ、テレビに映りたいから。メディアで紹介してほしいから。

その気持ちはわからないこともない。メディアに載ると、それはそのまま売り上げに繋がるからだ。

私のような木っ端ライターにも、ほぼ毎日のようにプレスリリーズが届く。ほとんどは店と契約している宣伝会社からだが、宣伝会社を入れているという時点で、私は取材をする気にならない。あー、萎える。萎えまくる。

取材をしたとしても、それは宣伝会社の手柄になるだけであり、なぜ私がそれに協力しなければならないのかと思ってしまう。私以外のライターにも送っているだろうし。

それと、メディアの「ウケ」を狙ったところで、それが人々に受け容れられるかどうかは別の話だからである。いったい、あなたはどこを向いて仕事をしているのか、と言いたい。

そりゃ宣伝も大切であることは間違いない。メディアで採り上げられるのも重要だ。でも、情熱を向ける先は、メディアではなくお客だろう。

私の場合は、読者である。それを片時も忘れてはならない。

 

※今日、撮影の現場へ行ったとき、私が撮影した写真で作ったB1サイズのメニューが掲げてあった。大きく使っていただけると、やはりウレシイ♪