今や風俗産業はすっかり下火になったが、90年代は週刊誌で毎週特集が組まれるほど盛り上がっていた。
昔、編集プロダクションで働いていたとき、何とか雑誌で採り上げてもらおうと、頻繁に電話をかけてくる風俗店の店長がいた。内容はというと、
「こんなコース(プレイ)を思いついたんですけど……」というもの。
それで「面白い!」と思ったら、すぐに企画書にまとめて編集部へ送っていた。ライターにとって、いちばん大変なのは、ネタ出しなのだ。それが向こうからネタが転がり込んでくるわけなので、「ラク」ができるからだ。
それは風俗業界に限った話ではない。デカ盛りや激辛をウリにしている店も同じようなことをしている。普段、店でお客に出しているものではなく、より過激にアレンジしたものをテレビ用に作っているのだ。
それはテレビ局が、店を紹介することとバーターで特別なメニューを作ってほしいとお願いしていることも考えられる。店も頼まれれば、悪い気はしないだろう。
何しろ、テレビに映りたいから。メディアで紹介してほしいから。
その気持ちはわからないこともない。メディアに載ると、それはそのまま売り上げに繋がるからだ。
私のような木っ端ライターにも、ほぼ毎日のようにプレスリリーズが届く。ほとんどは店と契約している宣伝会社からだが、宣伝会社を入れているという時点で、私は取材をする気にならない。あー、萎える。萎えまくる。
取材をしたとしても、それは宣伝会社の手柄になるだけであり、なぜ私がそれに協力しなければならないのかと思ってしまう。私以外のライターにも送っているだろうし。
それと、メディアの「ウケ」を狙ったところで、それが人々に受け容れられるかどうかは別の話だからである。いったい、あなたはどこを向いて仕事をしているのか、と言いたい。
そりゃ宣伝も大切であることは間違いない。メディアで採り上げられるのも重要だ。でも、情熱を向ける先は、メディアではなくお客だろう。
私の場合は、読者である。それを片時も忘れてはならない。
※今日、撮影の現場へ行ったとき、私が撮影した写真で作ったB1サイズのメニューが掲げてあった。大きく使っていただけると、やはりウレシイ♪