永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

それ、取材拒否でイイんじゃね?

「どんな食材を使っていますか?」

グルメ取材において必ずする質問である。食材の産地やブランドなどはもちろん、調理法まで教えてくれる人もいれば、逆に「企業秘密です」と、その部分には触れてほしくないというオーラを放ちまくる人もいる。しかし、「話せる範囲で結構ですので」と言うと、大抵は教えてくれる。

そもそもレシピの取材で店を訪れているわけはない。この質問の意図するものは、その食材を用いることで料理の味にどのような影響を及ぼすのか。また、作り手自身がめざしている味が知りたいのであって、それ以上でもそれ以下でもない。

そんな中、ある店のご主人から今までにないパターンの回答をいただいた。

「今、多くの人々はネットなどメディアの影響で、料理ではなく情報を食べていると思うんですよ。だから、あえて情報を載せたくはないんです」

「情報を食べている」ということはすごく共感できる。ご主人のおっしゃる通りだと思う。皆、食べログの口コミやGoogleマップのレビュー、すなわち情報を見て店に足を運ぶのだから。

ご主人は「情報を食べる」ことに対してネガティブに捉えてらっしゃるようだが、私はそうは思わない。いくら口コミやレビューを熟読しても、穴が空くほど写真を見てもお腹は膨れないし、店へ行った気にすらなれない。料理をさらに美味しくさせるスパイスとして情報を使えばよいのだ。

記事を構成する上で柱となる部分は話したくない、となると、そもそもなぜ取材を受けたのか?ということになる。ええ、もちろん尋ねましたとも。

「事前にそういう質問があると聞いてなかったので」とのこと。その理屈が通用するなら、私の立場としては「事前にそういう質問には答えられないと聞いていなかったので」となる。売り言葉に買い言葉になるだけなので言わなかったが。

結局、味のことをメインに話を聞くしかなかった。薄っぺらい内容の記事になるのは仕方がない。帰宅してもモヤモヤは晴れず、他の媒体はどうやって記事にしているのかが気になってググってみることに。すると、食材や調味料、調理法についてきちんと書かれた記事を見つけてしまった。

これはいったいどういうことなのか!? 何だかとても悲しくなった。私の態度に問題があったのだろうか。当初は電話かZOOMでの取材で交渉するようにと編集部から言われたので、そのように進めた。しかし、ご主人から

「電話取材ということは、ウチの料理を食べずに記事を書かれるということでしょうか?」という質問をいただき、さらに

「美味しさというものは、料理の味だけではないと思っているんです。店の雰囲気だったり、その場に居合わせた他のお客さんも全部ひっくるめて美味しいと思っていただけることを私は心がけています」とおっしゃったのを機に、むしろ彼と会って、彼の作る料理が食べたくなり、自分の判断で取材へ行ったのだ。

「取材してやった」などという驕る気持ちは微塵もなく、雑誌や本に掲載されることで読者と店のご主人が喜んでもらえたらという思いしかない。まぁ、でも、きっと私が悪かったんだろうなー。

さて、どうやって原稿を書こうか……。