永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

老舗は旨いのか。2

「老舗は旨いのか否か」の話の続き。1回目の記事をご覧になられてない方は↓こちらを読まれてからお越しください。

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前回、老舗は旨い店もあれば、そうでない店もあると書いた。旨い店は、先代や先々代が作り上げた味を守るのはもちろんのこと、どうすればより美味しくなるのかを追求し続けている。

私が取材した中でいちばん古い店は、創業1760年。江戸時代中期である。現在の店主は8代目。彼がすごいのは、7代目まで頑なに守り続けてきたレシピを意を決して変えたところにある。

「何だ、そんなことか」と、思う人もいるかもしれない。しかし、考えてみてほしい。200年以上の永い歴史と培ってきた伝統ある店がレシピを変えることの重大さを。それによって長年にわたって通い続けている常連客が離れていくかもしれない。そんな不安もあったと思う。

レシピを変えた理由は、「今の人の味覚に合わないから」と、8代目。たしかに先代や先々代が作り上げた味を守ることも大切だが、味は普遍的なものではない。それこそ、100年、200年も経てば変わっていくのが自然だろう。

では、8代目が味を変えたことで店の歴史は終焉を迎えたことになるのか。その逆だ。店はより繁盛し、多店舗展開もしている。これも8代目が美味しさを追求した結果であろう。

それと、老舗の料理が美味しそうに思えるのは、接客などのサービス面や歴史を刻んだ店の佇まいも大きく関係している。旨いというのは料理の味だけではないということだ。

20年近く前、リサーチのために老舗と呼ばれる店へ客に扮して訪れたところ、接客の部分でとても不快な思いをした。その一部始終を雑誌に書いたところ、店主は激怒して編集部に抗議をした。彼の言い分は「味を評価してほしかった」というものだった。

味以前の問題であることに気がついていないのだ。老舗の看板に胡座をかいているとはまさにこのことだろう。先代や先々代から受け継ぐのは味だけではない。それをわかっている老舗は旨い店だといえるのではないかと私は思う。