永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

映画『Mammy マミー』。

映画『Mommy マミー』を見に行ってきた。26年前、和歌山市園部の夏祭りで出されたカレーに毒物が混入され、67人が急性ヒ素中毒となり、4人が死亡した、いわゆる和歌山カレー事件を再検証した作品である。

26年前、私はすでにメディアの世界にいた。ジャンルが違うので、和歌山カレー事件は取材していないが、当時のマスコミの加熱ぶりは今でもはっきりと覚えている。

事件が明るみになった後、園部地区で暮らす人々の間で犯人探しが行われた。デマも多く、人々は疑心暗鬼に陥っていた。メディアはそれを垂れ流した。

そんなとき、事件前に園部地区で2件のヒ素中毒があったことを朝日新聞がすっぱ抜いた。そこから林眞須美に疑いの目が向けられた。連日、林家に押し寄せるマスコミにミキハウスのTシャツを着た林眞須美がホースで放水するシーンは繰り返し流された。

私も含めて日本中の誰もが林眞須美が犯人だと決めつけていたと思う。その後、林眞須美は確固たる証拠もないまま逮捕され、2009年に最高裁で死刑が確定した。

映画では林眞須美の夫である林健治が自身が手を染めていた保険金詐欺について赤裸々に語るシーンがある。自分でヒ素を飲んで半身不随になり、2億円の保険金を手に入れた、と。

林健治だけではなく、林家に居候していた男性も借金返済のために何度もヒ素や睡眠薬を飲んでいた。映画では「みんなで楽しく保険金詐欺をしていただけなのに」と言っていた。

たしかに保険金詐欺という真っ当な稼ぎ方をしていなかった林家も責められる部分はある。だからこそ犯人に疑われたのだろうが、毒入りカレーによる無差別殺人とは別の話ではないか。当時はそんな判断も麻痺させるような報道のされ方だったのだ。

林眞須美の無実を訴える人々は、林家にあったヒ素とカレーに混入されたヒ素が別物だったことを根拠にしている。が、検察は再鑑定の要請に応じていない。映画の中で監督が自ら園部地区の人々に話を聞こうと奔走するも住人たちは口を開かない。園部地区でカレー事件は禁句となっているのだ。

それはどうかと思ったが、いちばん憤りを感じたのは、林眞須美が疑われるきっかけを作った朝日新聞の記事を書いた記者も調査報道はしないと言ったことだ。

そりゃ亡くなっている方もいるから慎重にならざるを得ないのもわからなくもない。しかし、和歌山カレー事件、林眞須美の逮捕にマスコミの報道が影響していないとは言えないだろう。だからこそ、きちんと調査報道をして、誤りがあったら訂正すべきではないのか。

この映画はマスコミの良心を問われていると思った。