永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

「なごやめし」とは何か?3

店と客の距離感の近さが「なごやめし」を生んだ

「なごやめし」とは何か?というテーマから、かなり横道に逸れてしまった。

一般的にローカルフードというのは、その土地の歴史や地場産業と密接につながっている。そのメニューが生まれたのは歴史的必然性があるのだ。

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例えば、喫茶店のモーニングサービス。昭和30年代前半に愛知県一宮市が発祥とされる。一宮の地場産業である繊維業を営む、いわゆる「はたや」さんは昼夜を問わず頻繁に喫茶店を訪れていた。そこで人の良いマスターが朝のサービスとしてコーヒーにゆで卵とピーナツを付けたのがはじまりだった。モーニングという文化は生まれるべくして生まれたのである。

では、思いつくままに書くが、味噌かつや手羽先、ひつまぶし、台湾ラーメン、台湾まぜそばあんかけスパゲティー、イタリアンスパゲティー(鉄板ナポリタン)、天むす、小倉トーストはどうか?これらの発祥のエピソードについては、今後このブログで紹介しようと思っているので割愛するが、これらにはある共通点がある。お分かりだろうか?

これらメニューの共通するのは、天才的なアイデアとセンスを持つ店主が生み出したものであるということ。つまり、「なごやめし」の大半は創作メニューだったのだ。しかし、想像してみてほしい。どの店にもないオリジナルのメニューを作るとき、常連客に試食をしてもらうだろう。数々の「なごやめし」は、その声に耳を傾けながら、試行錯誤を繰り返して生み出されたのだ。

店と客の距離感の近さは何もメニュー開発時だけのことではない。客は店主に味や値段のことを遠慮なく言ってしまう。それは決してクレームではなく、店を愛するあまりのこと。名古屋では喫茶店を自宅の居間の延長であると例えられる。店主は居間で一緒に過ごす家族や友人に近い感覚を持っているのだろう。思ったことをそのまま言ってしまうのはそのためだ。

「なごやめし」とは何か?との問いに対する私の答えは、

「探究心溢れる店主が試行錯誤を繰り返し、お客さんの意見にも耳を傾けながら生まれた、類い希な食文化」であると考える。しかし、それだけではまだ足りない。次回は「第二次なごやめしブーム」について解説するとともに答えを導き出していきたい。(つづく)