重度の脳性麻痺で立つことも、
話すこともできない女性と、
その母親と会う機会があった。
彼女は養護学校の友人とプールに通い始めた。
最初は水が怖くて、プールに入ることはおろか、
プールサイドに座るのがやっと。
水に顔をつけるのも、
額だけからはじまり、目、そして口。
それだけで1年以上がかかったという。
一緒に通っていた友人は途中でやめてしまった。
いや、正しくは、
「やっぱりウチの子には無理」と
判断した親がやめさせた。
友達がいなくても、
彼女はプールへ通うのをやめなかった。
母親は彼女の気持ちを尊重した。
通い始めて9年が経ち、
今年6月には記録会に参加した。
彼女は背泳ぎで25メートルを泳ぎきった。
達成感に彼女は号泣した。
母親も泣いた。
コーチも泣いた。
その様子を見ていた多くの人々も泣いた。
継続は力なり───。
彼女はそれを体現したのだ。
今の自分は過去の積み重ね。
今の自分に納得がいかなかったら、
過去を悔やむのではなく、
今を本気で生きるのだ。
それを積み重ねていこう。