永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

冷やしたぬきは、蕎麦ではない。

少し前に、一宮市にある『最上製麺』へ行ってきた。

丸亀製麺を筆頭に、ナンチャラ製麺といううどん屋をよく見かけるが、それらとは一線を画している。

ここは、うどんではなく岐阜のソウルフード、冷やしたぬきが看板メニューなのだ。

この日は暑かったこともあって、入店したのは13時すぎだったにもかかわらず、大勢の客で賑わっていた。そして、9割以上の客が冷やしたぬきを注文していた。

あ、注文は丸亀製麺やはなまるうどんのようにセルフ式。

冷やしたぬきは、小と並、大、特大とサイズが選べる。私は大を注文。

提供されるまで20秒もかからないくらいスピーディー。最小限の動きで最大限に速く提供できるように厨房機器の設置やスタッフの動きを計算して、今のオペレーションにたどり着いたのだと思う。

冷やしたぬきを受け取り、天ぷらコーナーはスルーして、レジで代金を支払う。ちなみに冷やしたぬきの大は825円。

ちょうどテーブル席が空いたので、そこに座って、あらためて冷やしたぬきを眺めてみる。

具材は煮揚げと天かす、ネギ、ワサビ。注目すべきは麺。色が黒っぽいことから、蕎麦であるのは間違いない。が、食べても蕎麦ならではの味と香りはほとんどしない。蕎麦らしいのは、ゴワゴワとした食感のみ。

蕎麦らしい香りがないなら、せめて喉越しを楽しみたいところだが、この太さゆえに啜ることができないのである。口に放り込んでワシワシと咀嚼するしかない。

このように、二八や十割の蕎麦とはまったくの別物なのである。マジメに蕎麦打ちをしている職人さんからすれば邪道中の邪道かもしれない。だからいけないのかというと、そうではない。だからよいのだ。

つゆも特徴がある。かなり甘いのだ。この甘みとワサビが妙にマッチするのである。汁がしみた天かすも旨い。煮揚げもまた甘辛く味付けがしてあり、アクセントとしてしっかりと存在感をアピールしている。

冷やしたぬきは、蕎麦ではない。冷やしたぬきという麺料理なのだ。名古屋のあんかけスパがパスタではないのと同様に。

書いていたら、また食べたくなった。この中毒性も冷やしたぬきの特徴だ。