
あるメディアの特集企画のリサーチで市内の某店へ行ってきた。
写真には映っていないが、1品目のアミューズから面食らい、次へ出てくる料理への期待が膨らみ、それは裏切られることがなかった。料理を食べ終えてから次の料理が運ばれる「間」も絶妙で、サービスを任されているマダムがすべての席にきちんと目配りしているのも伝わってきた。
料理はその1品1品に旬の野菜をふんだんに使っていた。しかも、フレッシュなままのものや、しっかりと火を通してあるもの、半生と種類ごとに火の入れ方が異なっていた。おそらく、気が遠くなるほど長い時間をかけて仕込みをしているのだろう。
他店では付け合せというポジションの野菜が肉や魚の美味しさに負けないメインとなっているのだ。と、言い切ってしまうと語弊があるかもしれない。肉や魚は野菜の美味しさを引き立てて、また、野菜は肉や魚をより美味しくさせるW主演といったところか。
シェフにじっくりと話を聞き、知的好奇心を満たしたい。そして、こんなiPhoneで撮った安っぽい写真ではなく、きちんと照明を当てて、もっとキレイに撮ってみたいと心の底から思った。
そこで会計時にあらかじめ持参したサンプル誌と企画書をマダムに手渡した。
店には数多くのメディアから取材のオファーが来るという。そりゃそうだ。しかし、ほとんど断っているという。マダムが別の店で修業していたとき、取材が入る日はまったく休憩がとれず、かつ無茶な要求をされたりして大変だったことや、記事が掲載されたり、番組が放映されたりすると新規の客が押し寄せるも、ほとんど1回こっきりで逆に常連客に迷惑がかかったことなども話してくださった。
店としてギリギリできる対応として、ストックしている写真を借りてコメントともに紹介するという提案もしてくださった。しかし、私が仕事をさせていただいているメディアは写真は撮り下ろし必須。その条件を飲むことは不可能だ。
そこで実際にサンプル誌を見てもらうと、丁寧に取材・撮影していることが伝わったようで、マダムの心が揺らいでいるのがわかった。
ちなみにこれは取材なので、店は費用が一切かからない。また、毎回撮影のために用意してくださった食材や料理の代金も支払っている。それ以前に今回のようにリサーチのために店へ食べに行っている。
マダムが話してくださった取材する側のスタンスは、私も含めてメディア関係者は猛省すべきである。取材先から借りた写真で誌面を構成する安易な取材スタイルも改めるべきだろう。少なくとも私は絶対にやらない。なぜなら、私でなくてもできることだし、私自身が楽しくないから。
とりあえず、取材の可否は保留となり、改めて連絡をいただけることになった。私もやるべきことはやったし、思いも伝えた。あとは吉報を待つのみである。