永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

オススメしたくなる店。

f:id:nagoya-meshi:20201203212345j:plain

まずは、告知から。

Web版『おとなの週末』にて、先月、名古屋・清水にオープンした『すし 葵』を紹介させていただきました。

otonano-shumatsu.com

実は、このブログで紹介した『えびかつととんかつ 油や えん』の店主、小栗広士さんが店を移転、業態変更したのがここである。

えびかつの店は、天ぷらと和食の店からの業態変更だった。つまり、天ぷら・和食 → えびかつ → 寿司と、実に3回目のリニューアルなのである。

「もともと寿司屋になりたくて料理の世界に入ったんですよ」と、小栗さん。さらに、こう続けた。

「寿司屋の修業をしていた頃、親方から『お前は寿司屋には向いていない』って言われたんですよ。20歳のときですね。理由は、人よりも体温が高かったからです」

その親方も小栗さんのことを思って、そう言ったのだと思うが、前途洋洋の20歳の若者にとっては死刑宣告をされたようなものだ。体温が高いから寿司職人には向いていない、というのは、ひと昔前の話である。と、いうか、私は迷信の類だと思っている。

そもそも、江戸前の寿司は、人肌くらいの温かいシャリを使う。ネタだって、ずっと握り締めているわけではない。ネタに触れる時間をいかに短くするかも職人の技術なのである。そんなことから、小栗さんは自分の中で「封印」していた寿司を復活させたのだ。

しかも、寿司はテイクアウトやデリバリーにも向いている。コロナ禍の今にはぴったりの業種である。幸いなことに、店の周辺には寿司屋はない。外堀通を越えた東区界隈にあるのは高級店ばかりだし、十分にチャンスはあると思う。

小栗さん、このたびはありがとうございました。新天地でのさらなるご活躍をお祈りしています。頑張ってください!

さて、昨日、ナガヤ史上ベスト3にランクインする、美味しい肉を食べさせてくれる店について触れた。グルメ取材を生業としていると、

「これまで食べた中でいちばん美味しかった、ナガヤさんのオススメの店を教えて」と、よく尋ねられる。そのたびに答えに窮してしまう。

たしかに、美味しいと思った店はいくらでもある。しかし、美味しい店がそのままオススメの店とは限らない。私がオススメしたくなる店は、居心地の良い店なのである。美味しいのは言うまでもないが、そこにいるとホッとするような店。

居心地の良さは、料理を作った人の、料理を提供する人が創り上げる。だから、私は「料理は人にあり」と言い続けている。飲食店だけではない。流行っている店やこの不況下でも利益を生み出している会社は、そこで働く人々に魅力があるからだ。

厄介なのは、人の魅力というのが数値で表せないことだ。だから、入社試験では出身大学や成績で判断するしかない。いい加減、その間違いに気がつくべきである。