永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

「ひとり飯」のススメ。(10)

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50歳を過ぎて、いや、40代の半ば頃からこってりとしたラーメンが食べられなくなった。二郎系ラーメンなんかは写真を見ただけでお腹が一杯になるくらい。豚骨や味噌もダメだし、脂が多めの塩もキツくなってきた。と、なると、選択肢は中華屋の醤油ラーメンか、昔ながらの中華そばしかない。

ところが、なかなか美味しい店がないのである。食べログなどのグルメ情報サイトでの評価が高くても、実際に行ってみると口に合わなかったりする。

そんな中、本当に美味しいラーメンに出会った。昨日、瀬戸市へ撮影に行った帰りにたまたま立ち寄った店で。いや、正確に言えば、食べログで周辺検索をしたときにヒットしたのである。

それが名古屋市守山区四軒家にある『ひだ中華そば 陣屋』。食べログを見返してみると、昨年9月にオープンしたばかりのようだ。「ひだ中華そば」ということは、岐阜県飛騨地方の御当地ラーメン「高山ラーメン」であることは容易に想像が付く。

高山ラーメンは、スープとかえしを混ぜて煮込んでいるのが特徴。ずっとスープが入った寸胴鍋に火を入れているため、煮詰まってしまい、だしの風味をほとんど感じないハズレの店もある。

その昔、高山ラーメンの名店としてメディアに出まくっていた店にラーメン好きの友人と行ったことがある。店主は作務衣を身に纏い、タオルを頭に巻いた、いかにも職人風。接客が無愛想なところもまた期待を大きくさせた。

しかし、出てきたラーメンは、うっすーい醬油味しかしなかった。チャーシュー麺を注文したのだが、これも行けなかった。チャーシューと呼べるシロモノではなく、ただ豚肉をお湯で煮ただけ。さすがに残してしまった。ほどなくして、その店は潰れた。高山ラーメンは難しいのだ。

『ひだ中華そば 陣屋』で注文したのは、「ひだ中華そば大盛」(850円)に「チャーシュー3枚」(150円)をトッピング。出てきたのが、ブログのトップ画像のラーメン。ひと目見ただけで、これは当たりだと思った。

麺は、高山ラーメンらしく細麺。麺をすすり込むと、醤油の風味とともに魚介系の香り、鶏ガラのコクのあるスープの味がじんわりと広がる。見た目ほど濃くはなく、レンゲですくって何度も飲んだ。

卓上には、ホワイトとブラックの2種類のコショウと一味唐辛子と七味唐辛子、酢などがあった。酢をスープに少量くわえたところ、口当たりがよりマイルドになった。塩分を気にする年頃ということもあって、普段はスープをほとんど飲まないのだが、手が止まらなかった。

チデフォルトでのっているチャーシューは、トロトロの食感で、トッピングのチャーシューはやや歯応えのあるしっとり系。この違いもよかった。太いメンマも柔らかくて、やや甘めの味付け。これもスープとよく合う。味玉の黄身のトロトロ加減もベストだった。

「ひとり飯」の定番であるラーメンは、アタリ・ハズレが激しい。ただでさえ食べられるラーメンの選択肢が少なくなっている中で、こうしてアタリの店を見つけると本当に嬉しい。また名古屋の東部方面へ行ったら立ち寄ろうと思う。