永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

背水の陣。

コロナ禍であっても、ラーメン店や焼肉店は流行っているという話をよく耳にする。その一方で、ソーシャルディスタンスのため席数を減らしている上に時短営業なので売上は落ちているという話も聞く。

隣の芝は青く見えるもので、コロナ禍で流行っているとは言っても、コロナ前の売上を取り戻すには程遠いようだ。実際、

「席数を12席から8席に減らしたら、売上はきっちりと4席分のマイナスですよ」と、あるラーメン店の店主は言った。あ、この話は時短営業になる前の話ね。業種を問わず、飲食店はどこも厳しい。コロナ禍で飲食店を取材する中で実感している。

従業員を抱えた飲食店の経営者は彼らの暮らしを守らねばならないし、取引先との関係もある。老舗の店ともなれば、長年に渡って築き上げてきた文化の喪失となる。だから、無責任に「辞めた!」とは言えないのである。とはいえ、コロナ禍で進むも地獄。

店内での飲食がダメなら、テイクアウトやデリバリー、通販などに尽力している。もう、考えられるだけの、ありとあらゆる方法を実行している。まさに背水の陣。そんな姿に私自身もとても勇気づけられている。

中には緊急事態宣言による時短営業の要請を断り、感染拡大の防止対策を徹底した上で通常営業に踏み切った店もあると聞く。すべては従業員の生活を守るためである。誰もそれを非難する権利はないと思う。

私も仕事をする中で、何度も辞めようと思った。売上が低迷しているときは、どうしてもネガティブに考えてしまう。ただ、私はフリーランスである。私が仕事を辞めたとしても、メディア業界は1ミリも揺るがないし、誰からも惜しまれることもない。せいぜい家族が露頭に迷うだけである。

私の「辞めたい」は、「逃げたい」にすぎないのだ。辞めるに辞められない、逃げるに逃げられない人が人生のすべてをかけて仕事に挑んでいるのだ。私もオノレの人生から逃げずに真正面から向き合おうと思い直した。