永谷正樹、という仕事。

フードライター、カメラマンの日常を書き綴ります。

その街は、誰のものか。

昨夜、『きしめんズズズ』で行われた日本コナモン協会の懇親会で、会長の熊谷真菜さんから興味深い話を聞いた。

それは「大阪の台所」と呼ばれる黒門市場の話だ。

外国人観光客の増加によって、海鮮丼の価格が跳ね上がったことは何となく知っていた。だが、今では市場の様子そのものが大きく変わっているという。

テナントを借りて商売をしているのも外国人が多く、本物かどうかわからない神戸牛のステーキ串が高値で売られている。そうした状況に、地元の人は次第に足を運ばなくなっているそうだ。

「こうやって街は壊れていくんだなって」

熊谷さんの言葉が印象に残った。

話を聞きながら、コロナ前に取材で訪れた台湾を思い出した。

台湾には、台湾人向けのラーメン店が数多くあった。『一蘭』や『一風堂』は価格が高く、気軽に行けないため、現地の人たちが自分たちのために店を開いたのだ。

ただ、日本のラーメンを見よう見まねで再現しているため、どうしても本場とは違う味になる。そこで店名に「博多」や「北海道」といった日本の地名を入れることで、イメージを補っていた。

中には「本場北海道の豚骨ラーメン」といった、少し首を傾げたくなる表現もあった。

黒門市場の話は、もう少し複雑だ。

観光客向けの商売が増えたことで、地元の人が離れていく。結果として、その街本来の姿が少しずつ変わっていく。

名古屋にも柳橋市場や中央卸売市場がある。今のところはまだ大きな変化は感じないが、「街が壊れていく」という言葉が頭から離れない。

観光と日常、そのバランスをどう保つのか。

これから名古屋の街にとって、大きなテーマになるのかもしれない。